第4話 生態系のルール

木の枝に顔が2つついた鳥がいた。

カシャッ


【ツインバード】

和名:モリフタゴクビハト

分類:クビハト科

頸になんらかの特徴があるクビハト科の中でも最大の種。種類によって性格や生活が異なるが、モリフタゴクビバトはかなり友好的な種類である。


「なんか奇妙なのも撮れたな」

セレナは突然水のような音に気づいた。

「何⁉︎水⁉︎……」

恐る恐る音の方へ向かうと、どうやら湖らしい。その近くで、緑色のネズミが湖の水を飲んでいた。先程撮り逃したネズミではない。

流石にカメラの取り扱いに慣れたセレナは、草むらから徐々に近づき、シャッターを切る。


【アロマラット】

和名:ミドリオオモリネズミ

分類:モリネズミ科

毛色が緑色の大型のネズミ。草むらなどの地上で行動することが多いために、保護色となっている。体臭が森の木々と同じため、嗅覚を頼りに獲物を探す天敵に見つかりにくい。


「へぇ、確かに良い匂い…。香水の代わりになるかもしれないなぁ。いやでもあんな大きなネズミ飼えないか…」

どうやらこの湖は大人しいモンスターの憩いの場となっているらしい。その証拠として、湖の周辺にさまざまなモンスターが集まってきた。

「わぁすごい。動物がめっちゃ来た……、って、動物って言えばいいのか?モンスターって言えばいいのか?……モンスターって言っとくか」

結局彼らは腐ってもモンスター。さらにはこの世界の住民は彼らのような大人しい動物もモンスターと呼ぶのだから。周りに合わせた方が身のためだろう。

羊や豚のようなモンスターがどんどん集まってくる。


【ディッグ】

和名:コウスイツノブタ

分類:ブタ科

顔についた横向きの角は、住処すみかである穴を掘るためであり、攻撃用ではない。普段は大人しく、下級モンスターとして初心者の練習のためによく狩られるが、繁殖期はかなり攻撃的な性格になるため、絶対安全とは限らない。


【スフィアシープ】

和名:ヤマワタゲヒツジ

分類:ワタゲヒツジ科

ワタゲヒツジ科の中でも最大の種。ほぼ全身が毛で覆われているが、嗅覚と聴覚が発達しているため、不自由なく行動できる。


「あのヒツジの毛、肌触りが良さそうだな」

その時だった。森の中から犬のようなモンスターが、集団でスフィアシープに襲いかかってきた。

「え⁉︎何あれ⁉︎」

カシャッ


【ファングドッグ】

和名:コウスイシマオオカミ

分類:オオカミ科

のこぎりのような犬歯と背中の縞模様が特徴の中型のオオカミ。集団で行動し、獲物を鋸のような犬歯で切り裂く。この犬歯には、血液の凝固を妨げる毒を流し込める構造になっている。非常に知能が高く、勝ったモンスター、美味しいモンスター、勝てないモンスター、不味いモンスターを全て記憶している。よく猟犬として飼われる。


スフィアシープは逃げるが、犬歯で噛みつかれてしまい、血を流している。

やがてスフィアシープは失血によって動かなくなってしまった。

目の前にして生態系のルールを見た彼女は、開けた口を閉めなかった。

「……いや、彼らも生きるために必死なんだよ。しょうがない!」

セレナはファングドッグたちに見つからないように、後退りした。

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