後悔にもならない

毎日、死ねない理由を探している。


昨日は宿題の答えを、風邪で休んだ友達に見せに行くために。


今日は学校で、風邪を治した友達にCDを渡すために。


明日は、友達とCDショップを散策する約束をしてしまったために。


後ろ向きに、ネガティヴに。それでも僕は、まだ辛うじて・・・死んでは、いなかった。


『生きる』だなんて今の僕には大仰も大仰で、とてもなせることではなかったから。


生きることは辛いことで、死ぬことはもっと辛いことで。だからせめて、息していた。


それでもそんな僕にも、友達がいて、話が合って、約束をして。それなりに人並みに、楽しかった。


今日──CDショップを巡る約束をした当日になった、昨日の明日。


ベランダの手すりに体重を乗せて、8階下をのぞき込んで。


あと2秒、僕は地面へ落ちていく。


今朝、友達が死んだ。轢かれた、僕ん家に来る途中。


約束なんてしなければ。


CDなんて貸さなければ。


話が合ったりしなければ。


会ったりなんてしなければ。


僕が君を、生きる理由にしなければ。


君が死ぬことはなかった。


少なくとも、僕よりは生きる意欲に満ちていた君が、僕より先に死んではならなかったはずなのに。


君が死んだことに、『悲しい』はない。『ごめんなさい』も言わない。


ただ僕はもう、今日を1秒だって、続けられない。


生きたい君を殺した僕が生きることは、もう、死ぬことよりも、つらい。


・・・独り善がりだけど。『死後』なんてものが、あっ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る