3日目 また会う

今日でここに来てから3日目だ。

まあ、おそらくなのだが。

「さて、起きるか」

ここでは寒さや暑さ、これといった体調の変化がない。それも今だけかもしれないが。

まあ、不安になるような事はこれ以上考えないようにしよう。

そして、体を起こした時に気がついた。

「あっ。今日は来てるんだ。おはよう」

「……」

桜の木の下にいたのは、初めてここに来た時にいた女の子。

見た目で言うと中学生から高校生くらいだ。

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「……なに?」

「君が言った『まだ起きないの』ってどういうことだ?」

実際に今俺は起きた。

前回だってそうだ。

俺が初めてここに来て目覚めた時に彼女はこの言葉を言ったのだ。

「俺は今起きてる。一昨日だって起きてた。なのにまだ起きないのと君は言った。それはなんでだ」

「……やっぱりまだ、分からないのね」

「…どういうことだ」

「なんで私がああ言ったのか。それは私には言えない。教えたくても教えてあげられない。そうしないと、あなたは本当に起きれなくなる」

……やはり、分からない。

ただ、ひとつ言えることは

「君は、僕に何も教えられないってことか」

「ええ。そういうこと」

収穫はなし。

現状を変えることは出来なかった。

「……ただ、教えてあげられることはふたつだけある」

「……教えられること?」

「1つ目は私の名前。もうひとつは、今後あなたが何をするべきなのか。そのふたつが私に教えられること」

……1つ目の情報が必要かどうかは分からないが、2つ目は間違いなく今必要としている情報だろう。

「教えてくれ」

何が起こるのか、どんな情報なのかは分からない。

だが、今は情報が必要だ。

「わかったわ。まずは、私の名前。私は『神楽かぐら 桜花おうか』」

「神楽 桜花?」

彼女の名前は初めて聞いたはずなのに、昔から知っていたような、懐かしい感じがする。

「そして、もうひとつ。あなたがこれからやるべきこと」

いや。確かにこの情報は必要だ。

しかし、今はこの情報よりも、彼女の名前の方が大切な情報な気がする。

だが、聞くに越したことはない。

「あなたは、今までと同じようにしていればいい」

「は?」

「今まで通りにここで過ごして、毎日その本を読めばいい。そしたらいつか、本当に何をしたらいいのかわかるから」

「……わかった」

これ以上聞いても何も言ってくれないだろう。

それに

「やるべきことがわかっただけでもありがたい」

何をするのか分かっただけで、気が楽になる。

「それなら良かった」

「なら、とりあえず今日もこれ読むか」

そして寝ている所に置いておいた本を手に取る。

「どうせなら桜花も見るか?」

「…じゃあ見ようかしら」

そして2人で追加された1ページを読む。

「……やっぱり何言ってるかわかんねぇな」

3ページ目には


2ページ目の苗木が少し育った絵と、右足がない少女の絵が描かれていた。きっとこの子も2ページ目の子だろう。そして

「また会えるのだろうか。また笑い合えるのだろうか」

と書かれていた。

ただ一つだけ理解出来た。

「多分、この少女と前にいた男の子は病院にいるってことなんだろうな」

おそらくこの少女は入院しているのだろう。

「……そう。正解」

「え?」

右から聞こえたその言葉。

「なんで君が、桜花が知ってるんだ?」

「……」

この日はこれ以上桜花と話せなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る