立花くんと第3NTR人。
立花は部活には入っておらず、放課後特に何もなければ、下校時刻は割と早い。
少しの提出物を教室で仕上げ、真っ直ぐ最寄り駅まで向かう。
落陽高校は割と部活動が盛んで、帰宅部は少ない。だから授業終わりにすぐに学校を出れば、最寄り駅まで歩く生徒はかなり少ない。
少し遅くなったが、やはり少ない。
立花はスイスイと駅に着く。
道中、ケーキ屋も考えたが、こないだの件があって、行き辛いし、食べ辛い。食べる事で克服する。そうも考えた。いや、吐いてしまいそうだ。無理。
別のハマるものを探そう。立花はそう思って、地元のスーパーに向かうことにした。
自転車を漕ぎながら昨日のことを考える。
準備が整ってから連絡するから。詳しくはまた今度。そう理森は去り際に言って駆けて立ち去った。
あまりにも真剣な様子にただ事ではないと感じた立花は、理森の申し出に了承した。
出会って間もない上に、まったくの他人である僕にあんなに一生懸命に協力してくれる理森を疑いたくないし。そう思う立花だが、過去の元カノとの出会いが引っかかる。
それにも増して、やはり魔眼というワードが引っかかる。しかし、魔眼か…いや何それ? 何となくファンタジーだろうな、くらいしかわからない。
立花はあまり詳しくなかった。
「いや、無い…ないよな?」
確かにおかしな部分は昔から感じていた。何故か情事によく遭遇するのと、元カノ達も今までと真逆みたいな対応になる。
それに、深く考えようとすればするほど頭に靄がかかったような感じになっていた。精神力の消耗も激しく、こんなに好きだったんだなと、よく落ち込んだものだった。
魔眼、魅了系の魔眼か…帰ったら調べてみよう。目のことは割と詳しいんだけどな。
そう思っていたら、スーパーの手前の駐輪場で、三番目に付き合った過去と遭遇した。
「清春先輩」
「…はぁ」
流石にこうも続けては溜息も漏れてしまう。
「立てますか?」
(立ってるけど…? あ…これも出会った時か…?)
立花が中学生の頃、下の学年では知らない人はいない、学年一の美少女。長い髪を高めのツインテールにし、少し背は低いが、圧倒的胸部を持っていた。
中学の頃、二回の失恋でボロボロだった立花は割と雑な生き方をしていた。
不良、とまではいかずともよくケンカをしていた。と言っても、よく絡まれるからだった。
ある日、四人の不良に絡まれた。隣の中学の奴らで、同じ小学校出身の奴が一人いて、須藤にムカついていたと言って絡んできた。
多分、絵子のことが好きだったんだろう。
そう思った立花は、自暴自棄だったことと、何かモヤモヤとするこの胸の内をスカッとぶち抜きたかった。だから煽ってやった。
連れていかれた路地でボコボコにされたが、その同小の一人だけに狙いを定めてやり返した。
ボロボロの立花に満足したのか、その一人をぶちのめしたからか、不良達は去っていった。
そこに彼女は現れた。
『───大丈夫ですか! こんなにボロボロなのに、何ヘラヘラ笑ってるんですか! ハンカチ濡らしてきますから! 動いちゃダメですよ!』
彼女はボロボロの僕に献身的に寄り添ってくれた。
『───喧嘩じゃなくて……他に何かあったんですね…? 私でよければ話してください! 喧嘩なんかより絶対スカッとしますよ!』
同中だと知ってからは教室まで何度も足を運んでくれた。
『何故助けた、ってまた聞きますそれ? あんまり言いたくないんですけど…そー、あー、あれです。あれ。昔から…ヒーローに憧れてて…困った人を見かけたら放っておけないと言いますか…あー! 笑いましたね! 格好良いじゃないですか! ヒーロー! だから言いたくなかったのに…でも…やっとちゃんと笑ってくれましたね! 嬉しいです!』
彼女の勢いに圧倒されていた。次第に絆されていった。
『それは、おかしいです。あの柄本先輩と舟田先輩ですよね…それに須藤ですか…あの人嫌いなんですよ。二股なんて…だってそのせいで柄本先輩も舟田先輩もビッチ扱いですよ! 私に任せてください! まずは立花先輩の味方増やしますから!』
だから嬉しかった。
『良いことを思いついたんです! やっぱり他の幸せを見せつけた方が良いと…思うんです…だから、あー、えーと、き、清春先輩! 私とお、お、お付き合いしましょう! そ、それで、イチャ、イチャを、み、見せつけてやりましょう! 何笑ってるんですか! 拒否権はありませんからね!』
だから付き合った。
『えへへ…腕組み放課後デートなんて、すごい私! 好きな人とするの憧れだったんです…。ヒーローより? もーなんでそんな事聞くんですか! 清春先輩のいじわる! いいですか? 私は清春先輩の…ヒーロー兼彼女なんです!』
だから信じた。
『───清春…ごめんな…ごめんな。こいつがどうしても見せつけたいってよぉ。俺は反対したんだぜ。ごめんなぁ』
『───もー、こいつじゃないです! 杏子です! いつも言ってるじゃないですか! 大輝先輩! ひやん! あ、清春先輩! ちょ、ちょっとまだ話を、ん、あん、させてください!』
『───死ね、クソビッチが』
『───あ……え?! 清春先輩!? …あ、あ、違うんです! 違う違う! これは私じゃないッ! 待って! 待ってくださ───』
回想をやめた立花は、これ以上近づかれてはたまらないと、反転し、自転車を走らせ去った。
残された杏子は立ち止まったままポロポロと涙を零していた。
『…あ、あ、違うんです! 違う違う! これは私じゃないッ! 待って! 待ってくださいよぉ…あ、あ、追いかけないと! ◼️◼️先輩がまた悲しんじゃう! あんな顔もう見たくない! ああ! 離して! 離せ! このくそレイパー◼️◼️! やっぱりお前が◼️◼️先輩と◼️◼️先輩を無理矢理…絶対にい"ぎぃ! …あ、え? あ、あ、あ、やめて…いや、いや、やめてぇ! やめてください! ◼️◼️先輩にあげるんだから! お前のじゃない! いや、お願いします! お願いします! やめてやめてぇぇぇいやァァァァ! …やめる…? 何を…? ヒーローを…?』
「あ…もー本当に嫌になります! なんなんですか、最近…よく見るこの夢は…でも夢の割に結構リアルなんですよね…まさか私の願望?! あ〜イライラする…あれ、あれ…涙…あれ、なんで…なの? おかしいな、あはは、止まらないな、あはは、は、はは」
彼女は塗り潰された夢を最近よく見ていた。玲奈がグループに入ってから頻繁に続いていた。
安曇杏子。彼女はいつまで経ってもヒーローになんてなれない。
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