第18話

 ――激しい音を立てて崩れ落ちる階段。炎は勢いを増す。


「……ちゃん、兄ちゃん……」


 薄れゆく意識のなかで、泣き叫ぶように助けを呼ぶ声が聞こえる。


 ……呼吸が苦しい。熱い。熱い。熱い。


 遠くからうなるようなサイレンが聞こえる。熱い。


 もう、声は聞こえない。


 炎が広がる音が既に世界を支配してしまった。


 ……ごめんな。兄ちゃん、お前を助けられなかった……。



「……ごめん、……ょうま、ごめん……」




「――っ!」


 ふっと、意識が戻る。


 世界がぐるぐると回っている。これが眩暈だと理解するのに数秒を要した。


 動悸を感じる。痛いほどに心拍数が上がっている。


 ゆっくりと眩暈が治まっていく。視界もだんだんと戻ってきた。


 俺は、片足を柵にかけた状態で止まっていた。

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