第14話
先ほどの交差点に戻った俺達だが、そこにはハンカチどころか俺たちの衝突の痕跡は欠片も無かった。何度も丁寧に周囲を探ってみるが、見つかりそうな気配は無い。
聞けばそのハンカチは、穂夏が小さい頃に母親にもらった手作りの誕生日プレゼントらしく、彼女としては何としても見つけたいようだ。
「誰かが拾って交番に届けてくれてるのかな……? そうだといいんだけど……」
「その可能性も無くはないけど……」
もとより交通量が多い道ではない。俺たちがいなかった短い時間にハンカチに気づいた人がいて、かつその人が律儀に交番に届けてくれるような人である確率は低いだろう。一分一秒が惜しい朝の忙しい時間帯となれば尚更だ。
「それより、さっき二回も人にぶつかったって言ってただろ? その誰かさんと衝突した時に落としたんじゃないか」
「たしかに。言われてみれば……。その時ぶつかった人、すぐにどこかにいなくなっちゃってさ。それに気を取られて、ハンカチ落としたのに気づかなかったのかも……」
「んじゃ、そこまで探しに戻るか。どのあたりでぶつかったんだ?」
そう尋ねると、穂夏はううんと首を横に振った。
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