第9話
「よし! じゃあ行こっか!」
「……行くって……どこに?」
「どこって、学校に決まってるじゃん。君も登校中でしょ? こうして会ったのも何かの縁ってことでさ! せっかくだから一緒に学校まで行こうよ!」
なんだ、そういうことか。てっきり道場に強制連行されてしまうのかと身構えてしまった。この子からはなんというか、それくらいやりかねないような圧迫感を感じる。
「ん……まあいいけど」
本当はこんなに可愛い女子と一緒に登校できるなんて夢のようで、ちょっと心が躍ってはいるのだが、それを悟られたくなくてあくまでクールに了承する。こういうときに無駄にカッコつけてしまうのは、男の子としての性だろう。
そんな俺の胸の内など当然知る由もなく、俺が静かに頷くと、彼女は太陽のような笑みをニコパッと浮かべて自己紹介を始めた。
「やった! 私、
「お、おう。よろしく……」
穂夏は一言言うたびにどんどんと顔を近づけてくる。呼吸の音すら聞こえてくる距離で、そのおかげでこっちは平静を保つのに必死だ。何かシャボン玉みたいな良い匂いするし。
俺がドギマギしているうちに、穂夏は何事も無かったかのように学校の方へ歩きだしてしまう。俺も急いで後を追おうとするが、しかしすぐさま穂夏はペースを落とし、不安げな表情でこちらを振り返った。
「……あ、今気づいたけどもしかして君先輩ってことはないよねないですよね……? がっつりタメ口で話しちゃってましたけど……」
「大丈夫だよ。俺も今日から二年生だから」
「良かったー……。うち、道場なんてやってるからさ先輩後輩の関係とか、結構敏感になっちゃうんだよねー」
「へー、そういうものなのか。あ、そうだ。えっと俺の名前は
俺がうっかり忘れかけていた自己紹介をすると、まるで仮面のヒーローの正体を見つけたかのように、穂夏はキラッと目を輝かせた。
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