第3話 移動するもの

 レイがこの場所に滞在して数日が立った。レイは簡易食を片手に頬張りつつ、記録用の電子パネルにデータを打ち込んでいた。


「これで今日は三台目。明らかに数が減っているな」


 右肩下がりのグラフを眺めて、軽く息をつく。横にはついさっき破壊したR7改が小さく煙を吐いている。定期的に現れるこの兵器や周囲の環境を観察したことで、いくつかわかったことがあった。

 仮の名前だからとレイによって安直に名付けられたR7改は、本物のR7から性能が上がり、加えて大量生産が考えられた造りになっているということ。日に日に周囲に現れる固体の数が減っているということ。そしてここでは発砲音が聞こえるのが日常であるということ。


 小さい発砲音がこだまし、レイは天を仰ぐ。見上げた空は、相変わらず紫色に染まっていた。凝り固まった身体をひと伸びしてほぐし、立ち上がろうとした、その時だった。

 爆発音が響き、地面が揺れ、レイはバランスを崩した。明らかにいつもの銃声とは違う。そのうえ遠くない場所から聞こえている。


 向かうべきか、残るべきか。ここで長く停滞していても仕方ない、そう考えていたレイの判断は一瞬であった。


「行こう」


 最低限の装備に加え、威力が高めのレーザー銃と接近戦のための銃に小型のナイフ。記録用のコンピューターと、万が一のための自爆装置も。


「これは、使わないことを願おう」


 禍々しい色の自爆装置の作動スイッチを見て顔をしかめる。自爆なんて、誰が好き好んでやるものか。

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