02
彼女の告白を受け入れたその後、河川敷の公園で話した。好きだと自覚してからも、二人きりで会話に困ることはなかったのに、その日はお互い緊張していた。しきりに「寒いね。」「うん、寒い。」と繰り返した。
僕は彼女ととても仲が良いと思っていたのに、結構知っていると思っていたのに、「いつから私のこと好きだったの?」と聞かれたときは、驚いた。僕も、同じ質問をしたら、さらに驚いた。
僕が、彼女は僕のことを好きらしいと意識し始めたのは、彼女が僕を好きになった時期よりも前だった。恥ずかしい。だけど、どうやら彼女も同じだったようだ。
話の流れ的に、好きだと思ったきっかけの話になりそうだったけれど、ならなかった。助かったけれど、つまりは彼女も不純なきっかけなのだろうなと、その時は思った。
恋人になった僕たちに、特に大きな変化はなかった。二人の関係を呼ぶ言葉が変わって、その他の友人たちとは違う、「特別」になった。それだけだった。
人前での会話は、減ることも増えることもなかった。彼女はどうか知らないけれど、僕は照れくささを隠すために、いつも通りを意識した。
初めてのデートは、年が明けてから。僕が用事で外出することを話したら、初詣に行こうと言ってくれた。お互い、初詣ではなかったけれど。
神社に行く前に、オープンしたばかりのカフェで昼食をとった。おしゃれなメニューばかりで、僕にはよくわからなかった。だから、「私はこのオムライスにしようかな。」と言う彼女に、つい「僕も。」と言ってしまった。すると彼女は、どうせなら違うもの頼んだ方がいいでしょ、と言って、別のものを注文した。
僕には、そういう気配りが足りないと痛感し、謝った。彼女は優しいから、どっちにしようか迷ってたのだと言ってくれた。
店を出てから、神社までの道のりで、僕がトイレに行きたいと言ったら、「良かった。実は私も行きたいと思ってたんだよね。」とはにかみながら、感謝された。僕が初めて、愛おしいという感情を抱いた時だった。
「初詣は行ったけど、今日のためにおみくじは引かなかったの。」
おみくじの列で、彼女は嬉しそうに言った。僕は近所の神社で引いてしまったことを言えなかった。
彼女は大吉を引いた。とても喜んでいた。
その後ファミレスまで15分、ファミレスで2時間半、ひたすら話した。ほとんど彼女が話してくれた。僕が話すのをためらうような、ある意味、どうでもいい話をし続けてくれる。僕はそんな彼女を尊敬するのに、「どうでもいい話をしてくれるのって、本当にすごいと思うんだ。尊敬するんだ。」と言うと、どうしてか皮肉だと思われてしまう。
いつか引いた大吉のおみくじが出てきたと、彼女は言った。でも今年は小吉だったから、いつのだろうか。大吉のおみくじも、お守りみたいに神社に返すのかな。彼女は相変わらず、1回のターンでたくさん話す。僕と初めてのデートで行った年のおみくじじゃないかと言ったら、「私、大吉だったの?忘れてた。君が吉だったのは覚えているんだけど。」と言って笑った。僕は、僕の吉を覚えていなかった。
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