第6話

シャウラは男の子へポルックのもとへ向かうように促した。

ミアプラは臣下の元へ戻り、あれを出せと言った。

臣下はどこからか現れた黒い靄に手を入れ、そこから刀身の長い大剣を取り出し渡した。

臣下の腕力では引き摺りながらではないと、それは運べなかった。

ミアプラが重々しいそれを片手で振り上げると、シャウラの体中に冷や汗が滴る。

死ぬ、もう一度死ぬ。

あの程度の大剣は避けられそうにない。

大剣が振り下ろされる。

次の瞬間、誰もが目を疑った。

大剣は地面を抉り、そこらの草の息の根を止めたが、シャウラには当たらなかった。


「は…当たらないだと?」


ミアプラはシャウラめがけて二、三度大剣を振ったが、一向に当たらない。

ミアプラはしびれを切らし、シャウラの右腕をつかんだ。

大地を揺るがす雄叫びを挙げながら右側に吹き飛ばそうとした。

次の瞬間、またしても、誰もが目を疑う。

ミアプラの腕が方からちぎれ、吹き飛んだ。

ミアプラは腰が抜け、その場にへたり込んで、臣下に声をかけた。


「お、おい!あれを出せ!魔王様にもらった薬を!神秘の薬を!」


臣下は慌てふためき、またも黒い靄に手を入れ、丸底フラスコの薬品を手に入れた。

それは見ただけで不思議な液体であると分かった。

それは色が固定していなかった。今、緑色になったかと思うと、それは赤色に変貌している。

それは常温でもぐつぐつと煮立っていて、時折泡が弾ける。

ミアプラはそれを頭から被った。

先程とは段違いにミアプラに威圧感が増す。ミアプラの左手もいつの間にか元通りになっていた。

体からは青い煙が立ち上っている。


「失せろぉ!」


ミアプラが低く呟き一歩踏み出すと、轟音と共に地面にクレーターが出来た。

ミアプラの左拳は一直線にシャウラへと突進し、それはシャウラの腹部に沈み込んだ。

大きな力と衝突し、シャウラの足元が大きく凹む。

シャウラはびくとも動かなかった。


「…じゃない。」


「は?」


「弱い者をいじめるんじゃない!」


シャウラは怒っていた。人間を下に見ている態度、ポルックに対する態度、そして何よりあの男の子をいじめた事。

シャウラは腹にめり込んだミアプラの左腕をあり得ない力で掴み、完全にてが閉じるまで締めた。

ミアプラは痛々しく喚き、後ずさった。


「なんだ!お前その力!怒り?いや、そんな曖昧な強さじゃない…まさか!いやそんな…」


シャウラの体からは青い煙が上がっていた。


「さぁね。」


そこからは一方的だった。

心も左手も折れてしまったミアプラは抵抗すらしなかった。

シャウラの強烈な右フックを食らったミアプラは一撃で沈み、後ろにいた臣下たちがミアプラを引き連れてどこかへ帰ってしまった。

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