第5話
「今日はいい天気ですね~洗濯物が良く乾きそうです。」
「そうだね。帰ったら一緒にやろっか!」
ポルックとシャウラは散歩をしながら他愛もない会話を続ける。
ポルックは急に草むらへシャウラを連れていき、押し倒した。
「え、ちょっと…急に…」
「静かに。魔族。」
ポルックが目配せをすると、視線の先には禍々しい生物が映った。明らかにこの大地からは乖離した生物であった。
全身に硬い装甲に覆われたように不自然に硬質で、頭には角が一本、または二本生えている。背中からは筋肉質の翼が小さく顔を出している。
よく見ると、隣に人間の家族がいた。両親と思われる大人は傍に打ちひしがれていた。子供は痛めつけられながら遊ばれているようにも見えた。
「たっ、助けにいかないの?」
「自分の命を捨てに行くバカはいないよ。シャウラたちにあれを倒せる力があれば別だけどね。でもまぁ、よくある話だよ。旅をしている人間が死ぬなんてね。」
そういうものかと納得しようとし、もう一度魔族に目を向けた。
弟だ。
見間違えるはずがない。
魔族に遊ばれているのは弟だった。
それに気づいた時には既に足が動いていた。
ポルックが驚いて声をかけていたが耳には入らなかった。
シャウラは魔族の前に立った。
「手ッ、はなし、てくださ…い。」
声は震え、膝は立てない程に真っ直ぐではなかったが魔族を制止させた。
男の子はシャウラの背後に身を隠し、半身をそこから覗かせた。
シャウラは男の子を抱え、魔族に向き直った。
「はぁ?お前も殺されたいとか?」
中央の大きな魔族が話しかけてきた。
それが一通り話を終えると、両脇の魔族が大笑いした。
「お前も救えんよのぉ。草むらに隠れてさえいれば生きて帰れたところを。おい!そこの女も出てこい!」
ポルックは従うように、草むらから姿を現した。
その手には簡易な木でできた、弓を持っていた。到底それらにはかすり傷一つさえ付けられそうにもない代物だった。
「その男の子を連れて逃げてください!シャウラが一秒でも食い止めます!」
ポルックがそう言い放つや否や、弓を射た。
それが魔族に当たるはずもなく、少女は宙に浮いた。
みぞおちに魔族の拳がめり込んでいた。肋骨の二、三本は折れていると見て間違いない。
ポルックは胃液が逆流し、透明な液体を口から吐いた。
「一秒?笑わせるんじゃない。このミアプラ様を舐めるなよ??」
ミアプラは我々を痛めつけることを楽しんでいるようだった。
ポルックは膝から崩れ落ち、顎を地面に擦りつける態勢を取った。
ポルックは立ち上がったが、もう戦える状態ではない。
「見ていろ。お前さんの仲間をぶった切ってやるからよぉ。その後でお前を痛めつけてやるよ。知り合いだがなんだか知らんがそれを失ってから痛めつけるお前はどんな顔をするんだろうなぁ。」
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