第4話

どうやらシャウラは異世界とやらに来てしまったらしい。

姿形が変わることもなく記憶も受け継がれ、単にこちらの世界に来た程度の事だった。

都合の良い話だった。

毒親からも逃れ、暖かい家庭で過ごす。これが一般の幸せだと気付けた。

少女とは親しくなり、敬語で話す必要さえなくなった。



「ポルック!これおいしい!」


「ほんと!?良かった!」


お世辞も出ないほど良く作られた料理だった。

以前はカップ麺や親の残飯などを弟と食べていた。

人が作った暖かさのある、愛の籠った料理だった。


「ご馳走様でした!」


「はい。ご馳走様。」


「じゃ、ここに座って。」


ポルックがそういうとシャウラは木で作られた丸椅子に座った。

ポルックは赤い十字が付いた箱をどこからか持ってきて開け、綿に薬品を塗り、シャウラの顔を優しく叩いた。

ぼこぼこに殴られたシャウラの顔はポルックのおかげで少しずつ治ってきた。

シャウラが歩けるくらいになった時から散歩の習慣も付いてきた。

この世界の常識やある程度の周りの地理を知るのには丁度良かった。


辺りを見回すと、異世界に来たんだと思い知らされる。

ポルックに話を聞いても、歴史的、常識的にこの世界は以前のそれとは似ている点が一切なかった。

この世界は魔族がいるということ。

この世界は魔族の頂点に君臨する者がいて、その臣下がよく村や他種族が襲っていること。

魔族は神秘の薬を大量に持っており、その薬で大幅に身体能力を増幅させ、他種族とは隔離した力を持っているとのこと。

また、その薬の供給源を牛耳り、魔族の魔族たる地位を確立させていること。

沢山の事をポルックから教えてもらった。

特に、

「魔族に会ったら何が何でも逃げるんです」

これだけは今まで無いほどの剣幕で言われた。

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