第2話

シャウラが帰路に着くと、女の怒号が聞こえた。


「どこに行ってたんだッ!この馬鹿ッ!」


頬を一発平手打ちされた。

私が尻もちをつくと、その女はかかとで私の腹部めがけて体重をかけた。


ぅ゛えっ


という声にならない声を吐出すると、胃液が口元に戻る気分の悪い感覚がする。


「お前はな!勝手に動いていい人間じゃないんだよッ!」


女は叫ぶと同時に、シャウラの頬を左右交互に殴った。


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私の家は毒親が支配していた。

父親が社会人で、母親が中学生の時に私を妊娠した。

母親はそのまま中学校を辞め、父親はブタ箱行きになった。

その家庭は地獄だった。

家計はいつも火の車。さらに、母親のストレスの捌け口はいつも私。

虐待とも呼べるそれは私が四歳になるまで続いた。

私が四歳のころ、父親が出所した。

あの頃の熱が冷めやらない母親は、満面の笑みで父親を出迎えた。

それから程なく、私の弟が生まれた。また事故だった。

こうして私には唯一、自慢できる家族が出来た。


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シャウラの中で何かが切れた。

他人とは比べ物にはならないくらい辛い家庭環境に身を置き、毎日の暴力に耐える毎日。

そんな絶望のどん底に押し付けられる日々をシャウラは憂いた。

シャウラの生命の糸は儚く切れてしまった。

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