第5話 小布施
小説を書いていると、頭が疲れ、甘い物が欲しくなります。
そして、自分の書いていた作品の整合性についても気になる。
メモをしておけばいいのだけど、その習慣がない(おまけにそこまでする気力も無い)、必然的に全部覚えておかなくてはならないので、ちょっと面倒。
小説を書いていて、途中休むと前に何を書いていたのかもあやふやになり、仕方なく、自分自身の作品を始めから一気読みしたら、これを読んでいる人は本当に面白いのかな? せめて、暇潰しにでもなっていれば、と思ってしまう。
面白い作品を書く人はたくさんいるけど、書く人によって書き方は違う、綿密な取材をベースにした、プロット通りの作品や、その場の雰囲気だけで、スルスルと書かれる作品。
全部うらやましいが、私には出来ないこと。
だけど、作者の全員が遠藤周作先生や池波正太郎先生になれる訳じゃないので我慢する。
そんな時に気分転換をします。
私の地元は長野県長野市、近くに栗で有名な小布施町がある。
そうか、甘い物を食べるんだな、じゃあ、絶対に栗だろうって? 違う違う、栗じゃない、今の時期しか手に入らない(九月下旬~十月までかな?)、紅玉りんごのタルトタタンを買いに行く。
小布施にあるお気に入りのパティスリーロント、オーナーパティシエはオーボンヴュータンとフランスで修行された本格派。
ここのタルトタタンが酸味もあって、果肉もしっかりし絶品(紅玉りんごのある時期しか作らない期間限定品)だ。タルトタタンは作るのに時間と手間がかかる。個人で作るとなると大変、それをここでは、五百五十円で買うことが出来る(昔は五百円だったが、一時期七百円まで値上がりし、売れなかったのか、値下げとなり今に至る。酸味はレモン汁が多いのか、やや強め)、ある意味お買い得だ。長野だからりんごには不自由しないから普通に作れるけど、他のりんごが採れない場所ではお目にかかれない貴重な一品だろうと思う。
ちなみに、私の他のお気に入りは、かなり洋酒が効いたサバランのケーキとヴァローナ社のチョコレートを使ったアーモンドチョコレート、そして、甘いアーモンドクッキー、どれも東京価格でいいお値段だが、甘い物が好きな甘党なら、おすすめ。チョコレートとクッキーは、お土産にも利用出来るほどおいしい。
ここは家族経営で、前は年配の販売員がいて(オーナーのお母さんらしい)ずいぶんと親切に話してもらい気持ち良く買い物が出来たが、最近は若い人になったので、気軽に話が出来なくて少し淋しい。
タルトタタンなどを買い店をあとにする。
今回、栗は食べないつもりだったが、ちょうど連れに食べたいと言われ、仕方ない食べるか……となった。
桜井甘精堂で三百円の焼き栗を買う(栗の採れる時期の限定品)、紙コップに入ったまだ暖かい栗の殻を取って、可愛らしい小さなスプーンで食べる。
旨い、そして数もある、十個ぐらいあっただろうか。
焼き栗は、栗そのものだから、余計な味がしない。栗そのものといえば、小布施堂の朱雀だが、予約を忘れて、気がついたら終わっていた。ネットで食べた人の感想を読んでいると、朱雀が小さくなったことに言及していた。
まぁ、前に食べたことがあるから「いいや」と思ったが、機会があったら、また食べたい。あれは食べていると贅沢な気分になるお菓子。これも新栗がある時だけの限定品。秋になると、小布施は旅行客がたくさん来る。
桜井甘精堂の栗の木テラスも、さぞかし混んでいることだろう。
桜井甘精堂の栗の木テラスは和栗のモンブランが秀逸。昔に比べたら、小さくなったし、値段も上がった。だけどこれが甘くて旨い。スコーンも温かくて旨いが、断然、ここはモンブラン。
栗の木テラスの紅茶はポットサービス、量にするとギリギリ三杯分はある。値段は高いが仕方がない。連れがいたら、一杯交換すると良い、楽しい旅の思い出作り。ウバやアッサムなどのミルクティーで飲むとおいしいものは、暇なときなら「こちらミルクが合います。ミルクのおかわりが出来ますから、遠慮なく言ってくださいね」と、店員に言っていただくこともあるが、忙しいときは、言ってもらえないこともある。そんな忙しい時でも、ミルクのおかわりを頼むと、快く持ってきてもらうことが出来る(多分オブセ牛乳なので旨い、地元の牛乳)。
また、それぞれの月の特別な紅茶を頼むと、シンプルな白のティーカップでなく、華やかなティーカップに淹れてもらえることもある。撮影するなら、こちらもおすすめ。
何年も前のことだが桜井甘精堂は老舗なのでサービスが良く、年末最終日に、この隣の桜井甘精堂の泉石亭で食事をしたところ、「来年もよろしくお願いいたします」と言って、レジのお姉さんより栗の絵柄のおしゃれな手ぬぐいを渡されたことがある。それぐらい気が利いている。
もし泉石亭に行ったら、小さな庭と蔵のような美術館を見せてもらうと良い。食事が用意されるまでの暇潰しにもなるし、心も落ち着く。ただし、がっかりするといけないのでそばは普通、と言っておく。ついでだが、ここの栗のクリームあんみつのバニラアイスを抹茶アイスに変更してもらえるので、そのあたりも気がきいている(メニューには書いてはいなかったかな)。
そばについては、小布施にはせきざわと言う店がある。色々食べたが、私はここの新そばになった、冬季の変わりそばの柚子が好き。変わりそばは大盛が頼めないので、そばがきを一緒に頼む。値段も量も東京基準、そばは値段が高くて量も少ない。だが、そば粉が自家栽培のしっかりとしたものなので、文句は無い。とても、おいしいそば。
ちなみに、そばがきが嫌なら三昧そばというものがある。色々なそばが食べられるので、嬉しいそばで、もちろん変わりそばも入っている。
小布施は女の町と聞いたことがある。女性の喜ぶ物がたくさんあって目移りする。小さな町だが楽しい町。
小説書きはどうなったのか? 頑張って書いていたけど、リフレッシュしすぎて、書きたくなくなった。やっぱり、私は、読むほうが好き。
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