第27話
「な、何を言ってるんだ?この人・・・」
突然のメッセージに俺は嬉しさよりも不信さを感じてしまった。
しかし、一度メッセージを見てしまったので既読無視をするわけにはいかい。
すぐに俺は『良いですけど、急にどうしたんですか?』と返信した。
いつも通り返信は速かった。
おそらく彼女は常にスマホを握りしめているのだろう、そう思わせるような速さだった。
『えー、実は私、水着のイラストに挑戦してみたいんです!!しかし、私は可愛い女の子の水着姿というものを今まで見たことがありません。だから今回はその参考ということで・・・』
『既存のイラストや写真なんかじゃダメなんですか?』
俺は率直な意見を述べた。
『それは師匠に言ってください!師匠は”生”しか勝たんとおっしゃられたので、やっぱりこういうのは自分の目で見た方が良いと思った次第です。』
『自分で水着着たら良いんじゃないですか?』
『それは・・・ほら、少し恥ずかしいじゃないですか。水着着て自分の姿を鏡越しにイラスト描くとか・・・できません。それに、私ってほら、あんまりスタイルも良くないですし・・・』
『そんなことないですよ・・・』と俺は彼女の自虐的な発言を否定しつつも、ある一つの事柄以外のことについてはほぼ納得できた。
俺が唯一納得できないもの、それは・・・なぜ彼女が俺まで連れて行こうとしているのか』だ。
まさか、俺と海水浴デートなんて望んでいるわけでもあるまいし。
一体何のために彼女は俺と一緒に海に行きたがるのだろうか。
悩んでいても仕方がないので普通に聞いてみた。
『どうして俺まで一緒なんですか?』
『そ、それは・・・い、妹さんがいるからですよ!!』
『天舞音がどうかしたんですか?』
『どうしたもなにも、めちゃくちゃ可愛かったじゃないですか!スタイルも抜群ですし!素材としては最上です!!!だから大和川君と一緒に妹さんも誘おうと思ってたんですよ・・』
なるほど、そういうことか。
端から期待はしていなかったが実際少し見えていた希望の光が閉ざされるのはわずかにだが俺の精神にダメージを与えた。
『そういうことですか、なら天舞音に聞いておきます。』
少しテンションが下がっていたせいか俺は淡々と返信を済まして天舞音の部屋に向かった。
「天舞音、テスト終わったら一緒に海行かないか?」
俺は軽く声を掛けたつもりだったのだがなぜか天舞音は黙ってこちらを見ているだけだった。
そして、少し時間が経ってから彼女はニヤニヤしながら口を開いた。
「もしかして、お兄ちゃん私の水着姿に惚れっちゃったの?!ウケるwwwww」
「は?!」
「いやだってさっきまで私水着お披露目して、感想聞いてたじゃん!この流れでそれは確定でしょ!意外にお兄ちゃんもに積極的なんだね!!」
「いや、違うから!これは花園先生からのお誘いだぞ!!」
「花園先生が?!へ~、ちゃんと私と海に行くための口実まで作ってるなんて、さすが私のお兄ちゃんだね!!」
うわ~ウザイ。
この上なくウザイ。
「はいはい、どう考えようが個人の自由だけど、日程は空いてるのか?」
「うーん、たぶん空いてるよ。今のところは。」
「わかった。じゃあおやすみ。」
俺はそう言って天舞音の部屋から出た後、花園先生に連絡した。
『たぶん大丈夫そうです!』
『わかりました。詳しい場所と日程は追って連絡します。』
いや、しかし、今までの人生において女子と海水浴に行くなんて経験はなかったので正直楽しみではある。
これも期末のためのモチベを保つのに良い薬なのかもしれないな。
そう思いながら俺は試験勉強を始めたのだった。
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