第26話
「今日はみんな私のお披露目会に来てくれてありがとう!!!じゃあさっそく、着替えていきたいと思います!!あ、ちょっと待っててね・・・」
そう言って琴音は配信画面から抜けて衣装のセッティングを行った。
「じゃーん!!みんなお待たせ~!これが私の新衣装!!!」
彼女が着ていたのは濃い藍色に白の古典柄の浴衣だった。
良い感じに優雅さと落ち着きを払っているそのデザインは姫乃琴音にとって最適なものだった。
そして何より、それは見る者の多くを魅了した。
「うわー、すげーなこれ・・・」
俺は思わず目を疑った。
コメント欄にはには数多の赤スパ、合計すると100万円は余裕で超えるのではないだろうか・・・
そんな大金がこの一人の少女に対して投げ込まれる。
「あっ、みんなスパチャありがとう!!えーとこの浴衣どうかな?」
『すごいかわいい!!!』
『やっぱ絵師の千夜先生最高だわ!』
『これで1週間は飯が旨くなる!』
などなど大絶賛の嵐だった。
さすがと言えばさすがなのだ、未だに彼女の配信が自分の隣の部屋で行われているとはにわかには信じられなかった。
「みんな喜んでくれてありがとう!!ちなみにこれ髪飾りとかも変えれるんだよ!!」
『おー!!』
『もはや形容のしようがない・・・』
『俺、この髪飾りになりたい・・・』
たまに訳の分からないコメントも混じっていたがどれもこれも琴音の衣装に対する賛辞であることには変わりなかった。
そこから彼女は色々と浴衣の細部のこだわりについて触れたり、最近の面白かったことなど、雑談を始めた。
そして50分ほど話した後、その雑談も終わりそろそろ配信も終わりかと思ったその時、彼女は衝撃の一言を放った。
「あの~、皆さん?!めちゃくちゃもう終わりですよみたいな雰囲気出てますけど、一体いつから私の新衣装が浴衣だけだと錯覚していた?」
『あ、察し・・・』
『なるほど、そう来たか・・・』
『確かに、『そんな装備で大丈夫なのか?』って思ってたよ!」
なんか、ネタ祭りだな・・・
そう俺が思う頃にはリスナーの多くが半狂乱になっていた。
「今回のサプライズ衣装はなんと!!!私の水着です!!!」
おおー!!!!!!!という熱気がコメント欄から伝わってくる。
「じゃあちょっと待っててね!」
ヤバい、確かにドキドキしてしまう。
さすがに妹の水着では興奮しないとは思っているが、相手がVtuberならそれは通用しないのかもしれない。
てかもうこれ妹関係なくないか?とすら思えてしまった。
そう、普通にVtuberの水着なのである、決して妹のものではない。
物理的には・・・
「みんな~準備は良い?じゃーん、どう?これ?めっちゃ可愛くない??個人的にはガチで気に入っているんだけど・・・」
『尊い・・』
『誰か切り抜いてくれ~」
『なんか今日てーてーな瞬間多くないか?w』
などなど、その水色の水着にみんなくぎ付けだった。
特にこのオフショルダービキニは胸の大きさとかは関係なく単純に可愛かった。
確かにこれは、ヤバい、ヤバすぎる。
ヤバすぎて語彙力が・・・
「いやーやっぱり夏と言えば水着だよね~、今年も海行きたいな~ということで今回はサプライズで水着用意しました!!!じゃあ明日もお仕事やお勉強頑張ってください!!バイバーイ!!!」
そう言って彼女はみんなからの感想を聞いた後、その後の配信の予定などを伝え、今日の配信を終了した。
配信が終わってすぐ、天舞音が俺の部屋に来た。
「ねえお兄ちゃん、今日の配信どうだった?」
少し恥ずかしそうに彼女は聞いた。
「うーん、良かったんじゃないか?浴衣も水着も可愛かったし。」
俺は率直な感想を述べた。
「そ、そうかな?!お兄ちゃんそう言うならきっと大丈夫だよね!あ、あと、ありがとう・・・」
「何が?」
「その、水着と浴衣のこと、褒めてくれたから・・・」
「なんだ、別にそんなこと言わなくても良いだろ、めっちゃ可愛かったんだから!」
「え?!」
「うん?なにかまずいこと言ったか?」
「いや、何でもない!!」
その言葉を最後に赤面した天舞音は俺の部屋から出て行った。
それからすぐに俺のスマホが鳴った。
俺はスマホを確認すると花園先生からメッセージが送られていた。
『急ですみません、次の期末試験が終わったあと、一緒に海に行きませんか?』
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