第20話

『助けてあげるってどうやってだ?』


突然送られてきた天舞音からのメッセージに俺は返信を送る。


『まあまあそれは後々わかるよ。』


『わかったよ、じゃあ助けてくれ!』


『ねえお兄ちゃん、人に物を頼む時の態度ってそんなそっけないもので良かったっけ?』


『はいはい、助けてください。お願いします!』


『よし!お兄ちゃんそこまで言われたらこの私が助けてあげよう!!』


『で、具体的にはどうするんだ?』


『まあまあそう焦らない!大丈夫、お兄ちゃんはいつも通り過ごしておいて!』


いつも通り過ごせと言われてもこの状況じゃなあ・・・・


まあ天舞音がそう言うんだし大人しくしておこう。


放課後、俺は不特定多数の視線を感じながらファミレスに赴いた。


そこにはちゃんと花園先生の姿もあった。

ただ予定と少し違うのはその隣に天舞音がいたことだった。


「どうして天舞音もいるんだ?」


「別に良いじゃん。というかせっかく私が困ってるお兄ちゃんを助けてやろうとしているのになんですかその態度は?」


「す、すみません・・・てか花園先生は大丈夫なんですか?」


「はい。問題はないですよ。」


「じゃあ私達3人で勉強会始めるわよ!」

そう天舞音は高らかに言った。


「で、どうやって俺を今の状況から脱却させるつもりだ?」


「それはね・・・ズバリ!実はお兄ちゃん、シスコンだったっていうシチュエーションを作る!!」


「うーん、よく聞こえなかったな。もう一度言ってくれ!」


「だから、実はお兄ちゃんがシスコンだったっていうシチュエーションを作るの!!」


何を考えてんだ天舞音は・・・


「じゃあさっそく!!」

そう言って天舞音は俺の隣の席に座り、俺の体に接触するまで身を寄せてきた。


「おい、ちょっと近くないか?」


「良いじゃん別に!何ならこれぐらい近くないと逆にシスコンだと思われなくなるよ!!」


「一応言っておくが俺はシスコンだと思われたくもないからな!!」


「じゃあ大和川君は何コンなんですか?」

花園先生は凛とした表情でそう言った。


「いや、そんななんちゃらコンプレックスとかないですよ。」


「ちなみに私はショタコンです。」


「ちょっと黙ってください!何勝手に自分の性癖公開してるんですか!!ここファミレスですよ!!!」


「嘘です。」


「結局ノリで嘘ついただけじゃねえか!!!」


すると俺の口に何かが当たる。


天舞音の指だ。


「お兄ちゃん、もうちょっと静かにしたほうが良いよ・・・」


しまった。

つい声を出し過ぎてしまった。


辺りを見回すとみんなこっちを見ている。


「よっし!勉強するか!!」

俺は気持ちを切り替えた。


「あの、大和川君、この問題がわからないのですが・・・」


「ごめんお兄ちゃん、この問題教えてほしい・・・」


などなど質問攻めだった。

さすがに3時間滞在して教えるのに2時間、雑談に30分以上費やしたのは少しマズかっただろうか・・・

全く自分の勉強ができなかった。


なんなら天舞音に関して言えば、教えている時にやたらと体を密着させてくるので正直正気でいられなかった。

別に興奮しているわけではなかったが、周りにそれが見られてるとなるとまた違った感情が湧いてくる。

これは羞恥プレイに値するっと言っても良いだろう。


そして2回目の勉強会も無事(?)に終了したのだが、帰り道、天舞音の様子がおかしかった。


「どうしたんだ天舞音?」


「お、お兄ちゃん助けて・・・」


「ん?!」


「うう、Twitterに私がブラコンだって噂が流れてる・・・」

そう言って半泣きの天舞音は俺に泣きついてきたのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る