第21話

「そうか、それは大変だな・・・」

もはや自業自得としか言えなかったため、天舞音に慰めの言葉をかけることも難しかった。


「そんな〜、お兄ちゃん酷い!せっかく助けてあげたのに妹が困った時には何もしないなんて!」


「わかったけど、どうすれば良いんだ?」


「わからない。」


まさかの即答だった。

しかし、どうすれば良いのかわからないのは困ったな。

下手に動けばまた変な勘違いをされかねない。


「そうだ!お兄ちゃんがシスコンになれば良いんだ!」


「は?!」


「だ〜か〜ら〜、お兄ちゃんがシスコンになるんだよ!!そうすれば何もかも円満に解決するじゃん!」


「確かに俺の尊厳を無視すれば可能だな・・・」


「でしょ!でしょ!だからさお兄ちゃん、シスコンのフリしてよ!!」


「まさか実の妹がここまでのクズ野郎とは思っても見なかったな・・・」


何の解決にもならないであろう天舞音の作戦に俺は呆れていた。


「じょ、冗談だって!!じゃあさ、やっぱりお兄ちゃんは花園さんと付き合ってたみたいな?」


「お前どれだけ他人のこと犠牲にしたら気が済むんだよ・・・?」


「じゃあどうすれば良いの?」


「うーん、天舞音、今日配信あるか?」


「え、あるけど。どうしたの?」


「ジャンルは?」


「雑談、スパチャ読んだりとかマシュマロ拾ったりとかだけど・・・」


「じゃあそのマシュマロの中に自演のやつ入れといたら良いんじゃないか?」


「なるほど!お兄ちゃんは天才なのか!?」


「いや、別に普通に考えそうだがな・・・」


何か良い方法はないかと考えてみたが配信者であるという特性からか知らないが、やはりこの方法しか思いつかなかった。


「じゃあ自演のマシュマロでリスナーに良い解決策を出してもらうことにするね!」


窮地で解決策を見出した天舞音は脳内にこびりついていた不安を全て払拭した様子だった。


家に帰ると天舞音はすぐさま自演のマシュマロを用意した。


『高1女子です。兄とファミレスで勉強していたらみんなからブラコン扱いをされました。どうすれば解決できますか?』


「どう?」

そう言って天舞音は俺にマシュマロの出来を聞いてきたのだが、「違和感ないから大丈夫だと思うぞ。」としか言えなかった。

そもそもマシュマロなんてほとんど送られてきたこともない俺からしたらマシュマロを拾う企画なんて考えたことすらなかった。


「じゃあお兄ちゃん、配信行ってきま〜す!!」

そう言って、天舞音は自身の命運がかかった雑談配信を始めるのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る