第19話
「勉強会の第2ラウンド?!」
「うん、ちょっとで良いから!お願い!!」
そう言って天舞音は深々と頭を下げた。
「わかったよ。でも寝るまでの1時間だけだからな!!」
「うん!!」
天舞音は大きく頷いた。
その後、俺たちは少しではあるが一緒に勉強に励んだ。
そして、約束の1時間が迫ってきた。
「ねえお兄ちゃん・・・その、す、好きな人っている?」
突然の質問だった。
「いや、いないぞ。憧れの人だったらいるけど・・・」
俺は恥ずかしがらず、なるべく平然と答えた。
「憧れの人?」
「うん・・・とにかくすごい人でね、俺の活動の原動力になってる。」
「その人ってVtuber?」
「それは言えないな・・・」
「え、Vtuberじゃないの?」
「いや、Vtuberかもしれないし、Vtuberじゃないかもしれない。」
その一言に天舞音は眉をひそめた。
「じゃあ結局誰かわからないじゃん!」
「まだ知られたくないだけだよ。」
「いつになったら教えてくれるの?」
「わからない。」
俺はキッパリと答えた。
「あっそ、じゃあ私もう寝るから。おやすみ!」
天舞音はバタンと勢いよくドアを閉めて俺の部屋から出て行った。
いやしかし・・・・
天舞音には悪いが俺には自分の憧れのVtuberが妹であると打ち明けるほどのメンタルはない。
もし仮に言ってしまえば羞恥心から二度と天舞音と顔を合わせられなくなるだろう。
何もかも妹に頼りっぱなしの兄ほど格好悪いものはないだろう。
だからせめて、勉強は頑張らないとな・・・
「よっし!明日は俺も勉強配信するぞ!!」
そう俺は心の中で叫んだのだった。
翌朝、起きてすぐにスマホを確認すると花園先生からメッセージが送られていた。
『朝早くからすみません。今日の放課後空いてるでしょうか?もしよければまた一緒に勉強したいのですが・・・』
俺は『うん、良いよ』と短く返事をして身支度を済ませた。
そして、俺は天舞音を起こしてから学校へ向かった。
学校に着くと、なにやら教室の中が騒がしかった。
しかし、俺が教室の中に入るとなぜかその喧騒は静まり、皆が俺の方を見る。
そんな中、村松が俺に声をかけてきた。
「なあ雄馬、お前花園さんと付き合ってるってマジ?」
「え?!」
一体どうなってるんだ?
俺は記憶を辿ってみる。
あっ、そうだ、写真・・・・・・
確か俺は天舞音を経由してだが俺と花園先生が一緒に勉強している写真を見た。
もしあれが他の生徒にまで拡散されていれば・・・・
「い、いや違うんだ。別に付き合ってなんかないし・・・昨日のやつは勉強を教えてくれって頼まれたからで・・・」
「じゃあなんでS特のお前が特進の花園さんと接点を持つんだよ!」
「いや、これはちょっと複雑な事情がありまして・・・」
「複雑な事情?」
「ああ、Vtuberのな・・・」
「え、もしかしてお前の言ってた花園エデンってイラストレーターって花園さん本人ってことか?」
「そうだ。あとお前もうちょっと静かにしたらどうだ?周りにバレたら花園さんにも迷惑だ。」
「わ、わかたよ。まさかこの学校にVtuberだけじゃなくイラストレーターもいるとはな・・・・」
本当は超有名Vtuberもいるんだけどな・・・
というか俺はどうすればいい・・・
村松はなんとか納得させることができたが、他の大勢の同級生たちの誤解を解くのはほぼ不可能に近い。
そんな中、妹からメッセージが届く、『お兄ちゃんお困りのようだね・・・妹の私が助けてあげようか?』
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