5
運搬の最中、簡単に行き過ぎた為か、僕は完全に油断していた。あろう事か、死体を担いでいる事をとうに忘れ、ロンドンの大通りを鼻歌混じりで歩いていたのである。自分でもどうかしていたと思っている。しかし夜というものは、何かワクワクするものだろう?僕だけじゃない筈だ。
当然、そんな不審者を警察が見逃す筈も無く。通報か、それとも巡回の最中か、兎も角、一人に警官に見つかった。
「そこのお前!何をしている。」と、高圧的に呼びかける声が聞こえた。こんな真夜中にいるのは僕ぐらいのものだから、この声の主は僕に声を掛けたのだな、と振り返るとそこにはランタンを持った警官がいた。警官が僕に何の用だろうかと思案していると、この時やっと仕事の真っ最中である事を思い出した。僕は混乱して。「あの、その、ち、違うんです。」と、しどろもどろになりながら、死体を捨てて逃げてしまった。
僕を追いかける足音と共に、警官の「待て!」と、言う声が聞こえる。混乱していたが、意外に頭は冷静で、路地から路地へ逃げ、警官を撒こうとした。しかし此処らの土地をよく知らない僕が、地元の警官を撒ける筈も無く、最終的には袋小路に追い詰められた。チェックメイトと言う奴だ。
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