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 散々迷った挙句、来てしまった。真夜中の墓地に…

いや、ちょっと待ってくれ!確かに僕は世間体で言う、悪い事をしたのだろう。

「ハハァンなるほど、つまり君は旨い飯が食いたいばかりにつまらない盗みに走ったのかーなるほどなるほど。」と、言われるのは無理はないと自分でも思ってしまうが、良く考えて欲しい。僕は今まで死ぬ気で働いてきた。その分の対価として相応の報酬を貰う権利がある筈だ。それが何だ!稼いだ金の大半を食った後には不快感しか残らない。飯に使って、残りは多種多様な税で消える!僕は生まれてこの方娯楽と言う物に一切触れてきて無い!

こんなのあんまりじゃないか!……失礼、取り乱した。多分君たちは客観的に見ているからそう感じるのだ。主観的に見てくれ、そうすれば共感してくれるに違いない。

 さて、話を戻そう。この時の僕も色々と葛藤していたが自分は悪くないと言い聞かせて先へ進んだ。明かりを持たずに歩いていると、目の前から複数の鬼火が現れた。僕は驚き、サッと近くの墓石に隠れると同時、ボソボソと人間の声が聞こえた。僕は、もしや幽霊では?と怯えていたが実際は違う。後から知った事だが、あの墓地はある墓荒らしグループの縄張りで、僕が見たのは多分、彼等のランタンだろう。しかし当時の僕はそれを知らないが為、ビクビクと怯えるばかりで声が遠ざかった後も、動けずにいた。

 我に返ると、僕は当初の目的を思い出した。またあの幽霊に出くわすのであるまいかと弱気でいたが、これも今までの環境から脱却する為、勇気を出して動き始めた。

学者が言うには、貧乏人の墓が良いと。墓掘り人夫に渡すチップが少ない為、深く埋めて貰えず、棺も安物の木製だかららしい。と言っても、あの墓地は、身寄りの無い人などに無償で提供している所だから、厳選する必要は無かった。

 死体は、意外にあっさりと手に入った。まぁ、学者からのアドバイスも貰ったし、幾つか空振りになったが。それでも想像よりも早く終わった。しかし、本当に棺を浅く埋められているとは、墓石の前の土をちょっと掘るだけで、棺が見えてくるのだ。学者の言う通り、簡単な仕事であった。後は学者から教えて貰った住所へ向かうだけだ。

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