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君たちは、僕をカッコつけた愚かな罪人と勘違いするだろう。しかし、間違っているのは社会や世間で、僕では無い。見苦しい言い訳に聞こえるだろうが、まずは話を聞いてくれ。もし、僕に罪があるならばそれは、三大欲求の一つである食欲を持っていた事だろう。
僕はロンドンの貧しい家庭で生まれ、子供の頃から働き手であった。煙突掃除、靴磨きに新聞配達と幼少期から過酷で惨めな仕事をしていたが、大人の世界はもっと、過酷であった。青年になり、働き頭になると僕は工場で働いた。工場の仕事は、とても酷く、まず日が出てから日が沈むまで働いた。休み時間はあるものの、それはただのエネルギー補給、昼食のみで、それ以外では一切無い。まるでSF小説に出てくるロボットの様だ。彼等にもエネルギー補給は必要だろうし、あながち間違いじゃ無いだろう。
仕事が終わり、家に帰る頃には既に、ガス灯に火が灯っている。家で、家族とゆっくり過ごす時間なんて無い。晩飯を食べたら、明日に備えて寝るからだ。そうやって、必死に稼いだ金も、大した額じゃ無く、食べていくので精一杯だ。オマケに、労働者が手に入る飯と言えば、油ギトギトのフィッシュ&チップスに、ヌルヌルとした鰻のゼリー寄せと酷く、紅茶やミルクなんかは、労働者でも買えたが、紅茶は出涸らし、ミルクはチョーク粉で薄くしてあるのが普通で、酷い物にはホウ酸と言う、体に悪い物が入っているらしく、それで赤子が死んだと言う話を聞いてから買わなくなった。
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