淡い輝き

@Monsieur3rd

淡い輝き

月って面白い。日が経つごとに、違った表情を私たちに見せてくれる。ほら、「ウサギが餅ついてる」とかよく言うでしょ?でもそれだけじゃない。時には、「雲」と言う名の霧が「夜空」という大型ステージに舞い、音を立てて空を切り裂くように流れる風が、不思議な臨場感を演出してくれる。日中では決して見ることのできない限定のオアシス。中でも群を抜いて言葉が出ないほどのものがある。中秋の名月だ。その日、私は親に呼ばれて家のベランダから月を眺めていた。それまでの私は様々なことで思い悩んでいた。高校の部活、大学の生活、恋愛… 多岐にわたる悩みに縛られていた私だったが、月を見てその悩みは解放されたのだ。いや、正確に言うと、解放されたと言う実感すら最初は湧かなかった。そんなことに気づく余裕がないほど、あの月は偉大だった。何でそう見えたんだろう…。あの日、私には「3つ」の光が見えた。涼しい夜風のそよそよ感に気分が穏やかになる私に降り注ぐ、淡い黄色とも白とも言えぬ何とも絶妙な光。目を細めて見た時、四方に分散する光。逆によく目を凝らして見た時、一点に集中する光。どの光にも唯一無二の顔があり、私の前に近づいてくる。それはまるで私に歩み寄ってきた3人の男性のようだった。心優しい性格で甘い声で私を気遣ってくれる方。いかにも荒々しいながらも、実は心の奥底は優しくて、それが滲み出ている方。そして、優しいながらもご自身、悲哀に満ちた感情を持ち、何とも言い難い複雑な存在感を放つ方。3人の御仁に私は魅了されてしまう。そして迫ってくるのだ。「誰を選ぶ?」とね。どうすれば…。どの方を選べばいいかなんて私には決められない。でも迷う私に月が何か教えてくれると言うことはなかった。そんな月のある種マイペースなところに私は目を離さないではいられなかった。月って…面白い。

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