第11話バレンタインについて

「阪急にするか阪神にするか大丸にするか、それが問題だ」

「いや、何の話?」

「バレンタインを買いに行く話です」

「あげんの?あんたが?」

「いや、無類のチョコレート好き、里中くんの付き添いです。珍しいチョコが山ほど並ぶデパートのバレンタイン売り場に行きたいが、男子1人ではとても行く勇気もなく。かと言って一緒に行ってくれる女子もおらず」

「で、売り場に行っても違和感のないあんたに白羽の矢が立ったんか」

「オフコ〜ス」

「目当ての店絞って、デパート3つとも回ったらええやんか」

「!!神か!」

「そこまで!?」

「バレンタイン会場という未知の領域への恐怖で、正常な判断を失っていたようやな」

「さすがのあんたでもバレンタイン会場は敷居が高いんや」

「服屋とかとはまた違うからな」

「まあ確かに」

「あの空間の男子への拒絶感はなんなん?あんだけ色んなチョコが集まるなら、買いに行きたい男はいっぱいおるはずやのに」

「あげる相手は友達だろうが同性だろうがになってきたけど、送る側はいまだに女性限定やもんな」

「俺は太らんようにあんまりチョコは買えんけど、あの可愛い空間には行きたいなぁ」

「うちはさほどかなぁ。人混み苦手やし」

「お前は毎年山ほど貰えるからええやん」

「……お返しどうしようとか、悩みもあるんやで。というより貰っても1ミリも嬉しくない」

「里中くんが聞いたら憤死しそうやな。彼女がいたら俺なんかに頼まんで済むのに。ちなみに彼の夢は、彼女ができたら一緒にバレンタイン会場に行くことらしい。お互いにあげるのを買って一緒に食べるそうです」

「彼女が欲しいのか、チョコが食べたいだけなのかわからんな」

「どっちもなんやろ」

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好きだから着てるだけ 似合うから着てるだけ ヒツジ @houboku-hituji

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