第16話 波動術の完成
「神経を集中させて(気)を送れ! そうだ。その手を押し出しように放射しろ!」
健は両手を合わせ、祈るように両親指を合わせ絡めて、まっすぐ腕を伸ばした。かなりなエネルギーが消耗する。健の顔が高潮して来た。一気に(気)の放射をした。
そしてピキ~~ン物が割れる音がした。なんと! ビール瓶が粉々に吹き飛んだではないか?
拳銃で撃ったかのように。しかし、そんな物は何処にも無い、なんと言う事だ!
「し、師匠!!」 思わず健が叫んだ。
師匠は大きく満面の笑みを浮かべて頷く。近くで小夜子が叫んだ。
「す、凄いわ! おめでとう。良かった本当に」
人間の能力の中にある〔気〕それを増幅させたパワーが空気を圧縮してエネルギーに変える恐ろしい技であった。これまでの苦労が報われた思いだろう。
ついに完成した。要山和尚の極意、波動術の完成であった。
要山和尚が編み出した技ではあるが、かなりの体力が必要とする為にもはや誰かに伝授するしかなかった。勿論一人娘の小夜子を第一考えたが女性では無理があり、更に弟子達でも健ほど恵まれた体格の者は居なかった。だから健を選んだ?
それだけではないようだ。健を支えるのが小夜子なら、小夜子を幸せにしてくれるのが健と認めていたからこそ、健に伝授したのだろう。
堀内健は波動術の完成も完璧に近く、要山和尚も安堵の笑顔が浮かんでいた。
しかし、もう一方の問題も、かなり加熱してきたのだった。
要山和尚を悩ませている例の土地の買収問題である。毎回執拗に迫ってくる。
M市の盛田開発商会は、他にも東北一帯のリゾート地に手を広げていた。
社長は地元の県会議員、盛田一政である。県から政界の中央に出ようかと云う勢いであった。その地位を利用して次々と事業を広げていたが、裏では結構あくどい事も、やっている噂がある。その事に要山和尚は頭を悩めていた。
また合気道については、小夜子と健が引き継いでくれればと最近は日頃、考えていた要山和尚であった。今では健を我が子のように可愛がっていたのである。
もし出来るものなら小夜子と一緒に、なって欲しいと思うようになっていた。
つづく
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