第9話 小夜子いういう女性
健もそんな景色を眺めて、もう半年以上が過ぎたのだと思った。
無我夢中で働き考える事としたら、やはり原田だけ。あの日の出来事だけ。時はそんな思いと関係なく流れる。東北の秋は早い遠くの山々が秋色に染まりつつあった。紅葉の季節、木の葉が赤く色づき、その葉が地面を鮮やかに染める。
その赤く染まった落ち葉が、二人を包むように風がヒューと舞った。それから数週間、小夜子がまた山へ登って来た。今日も差し入れを持って来てくれた。
「建さん、貴方は何か武術でもやっているのね……もしかして空手ですか、その手を見て思ったの、私も父が合気道を教えている関係で物心ついた頃から合気道始めたのよ」
堀内さんから健に呼び方が変っていた。遠く山々を眺めながら語り始めた。遠くには太平洋が広がり名勝、浄土ヶ浜が見える。二人の上を空高くトンビが数羽フワリ、フワリと舞っていた。
小夜子は女性としては長身で百七十二センチあり、スラリとした美形であった。
それでも健の横に居ると肩ほどの背丈しかない。
健も、かなりの長身で百八十五センチと、がっしりとした体格だ。
その割には顔が面長で一見、おとなしく見えるが胸幅が厚く腕の盛り上りかたも凄く、物静かな顔つきは空手の試合が始まると、その表情が一変する。
「父はね。私に強くなる事を望んだのじゃなくて、精神の強さを教えてくれたのよ。私の場合小さい時から合気道を、やっていたから自然と取り組めたけど」
健は遠くを見つめながら小夜子の話にうなずいた。
健は以前から興味を持ち始めていた合気道に閃きを感じたのだ。
探していた物に、そう探していた物にそれは精神修行、合気道。精神を鍛える、真剣に合気道を習いたい。そう思った。
つづく
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