NO.15 灰式-ムカイ

その後、


シュレンとライトに


何も問題を起こすことなく


少年は静かに後ろからついて行っている。


ライトが先導して歩き進んでいるが、


道中三人は一言も話すことはなかった。


そして、


ライトの言う目的地へとたどり着いた。


三人は足を止め、


うち二人は目の前にある大きな扉を見上げる。


その純白の大扉は、


まるで三人の行く手を阻むかのように


立ち塞がっている。


大扉の威圧感に気圧されたのか、


この扉を見慣れていない


シュレンとクロムはそれを見上げていた。


ライトはそんな二人に一度目を向けた後、


顔を正面に戻し、


両手に力を込めてその大扉を押す。


すると、ゆっくりと大扉が開き、


軋むような音と引きずるような音が響く。


「――ああ、待ってたよ」


そう言って三人に顔を上げたのはムカイだった。


「初めましてシュレン、クロム」


ライトはムカイの言葉を待たずに


ズンズンと歩き出していた。


だが、


その後ろに二人が続いてこないことに気づき、


ライトは「おい」と言って後ろへ振り返る。


二人はムカイの方を見て固まっていた。


シュレンはムカイの圧に気圧されたのか


まるで毒霧の中にいて毒が体中を巡っているかのように


苦しげな顔をしていた。


一方、クロムは敵意を剥き出しにして、


今にも飛びかかりそうな姿勢をとっていた。


ライトはその二人の反応を見て、


その二人とかつての自分が重なる。


今より幼かった頃のライトは


二人と同じ場所でムカイと初対面し、


その頃のライトは


怯えた顔をして後ずさりをしていた。


ライトはフラッシュバックした記憶を


消し去るように頭を横に振り、


もう一度二人へと声をかける。


「……どうした、行くぞ」


その声に金縛りが解けたかのように、


二人は別々のタイミングで


一歩一歩進み始める。


ライトの両横に


それぞれシュレンとクロムが並ぶ。


三人の前には


机に両肘をつき、手を組み、


笑顔で三人を迎えるムカイがいた。


「僕は灰式-ムカイ。


シュレン、クロム、よろしくね」


ムカイは丁寧に一人一人へ顔を向け、


そう自己紹介した。

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闇に呑まれた世界の英雄譚 アマルテア @V_Amalthea

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