NO.14 三人目

二人は走りながらも、


周りに目的の人物がいないか注意深く見回していた。


ライトは後ろの気配が消えたと感じ、


不意に後ろを振り返る。


すると、彼の後ろを走っているはずの人物が


いつの間にか消えていた。


「――!?」


ライトは突然のことに驚き、


足を止める。


「アイツ……逃げたか!?」


初対面ではあったが、


アイツなら逃げかねないという直感があった。


一人目のメンバーでさえも


一から探さなければならないかもしれないと、


仕事が増えた感覚でいっぱいになったライトだが、


その予想は覆される。


「ライト、こっち」


ライトの居る場所よりも少し離れた所から


彼を呼ぶ声があった。


彼を手招きする人物は一人しかいない。


ライトは歩いて近づいていく。


「居たのか?」


「うん、ほら」


その人物はシュレンであり、


意外にも真面目に人探しをしていたようだった。


シュレンは暗闇の道を指差した。


その道は裏路地であった。


裏路地でくつろいでいる犬を


真剣な眼差しで眺めている一人の少年がいた。


ライトは無言で紙を取り出し、


目的の人物で間違いないか確認する。


ライトの斜め後ろから顔を覗かせるシュレンも紙を見る。


似顔絵で描かれた少年は、


痩せぎすで、骨張った顔に


いくらか長めの毛髪、


緑がかった黒色の髪。


それらの特徴は目の前にいる少年と


何ら一つも変わっていることがなかった。


その少年はシュレンと同じように


半袖と半ズボンを着用していた。


ライトは意味もなくシュレンを見た。


「……レンたちはこういう服しか


もらえないだけだからな!」


ライトの視線からシュレンは察しがついたようで、


言い訳をするかのようにそう言い、


腕を組んでそっぽを向いた。


ライトは「……何でもない」と言って顔を戻し、


紙を畳みながら、目的の少年に近づく。


「……お前がクロムだな?」


紙をしまうと、


少年と目線の高さを合わせるように


しゃがんで声をかけた。


「……!」


声をかけられた少年は、


目を見開いてライトを見る。


少年の目は彼の髪と同じ


緑がかった黒い色をしていた。


「ワン!」


三人が犬の鳴き声に反応し、


吠えた犬へと目を向ける。


その犬は裏路地の奥へと、


三人から見えなくなるほど奥へと走り去っていった。


ライトが顔を戻し、もう一度少年に話しかける。


「……クロムだよな」


「……ン」


肯定かそれとも声に反応しただけか、


そう反応した。


そして、少年は力無く手を伸ばす。


それも何故かシュレンに向けて。


「……え、レンに用?」


彼女は後ろから二人を眺めるだけの


体勢を取っていたため、


不意を突かれて驚いていた。


ただ何も言わずに手を伸ばし、


目を合わせている少年に、


シュレンはライトへ助けを求めるように視線を送る。


同じように視線を送っていたライトは


固い顔で頷く。


シュレンは恐る恐る少年の手を取り、


引っ張って立ち上がらせる。


少年は抵抗することなく、


されるがままに立ち上がる。


その少年の年齢に合わない


幼さが目立つ仕草や態度に


シュレンもライトも驚きを隠せなかった。

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