NO.13 『窓割りのシュレン』

「それで、


ここら辺をいつもウロウロしているシュレンなら、


コイツのことを見たことがあるんじゃないかと思ってな」


そう言って、


ムカイから渡された紙の二枚目を


彼女へと突き出すようにして見せる。


その紙に貼ってある手書きの肖像画を見て、


彼女は唸る。


「クロム……?


確か……


公園で子どもたちの輪によく見かけた……ような」


「その公園はどこにあるんだ?」


「あー、こっち」


シュレンはそう言って、


自身の後方へと振り返って走る。


ライトもその後ろを追って走り出した。


たどり着いた公園には、


お目当ての少年がいなかったものの、


例の子どもたちは集まって遊んでいた。


一足先に公園へ着いたシュレンが


子どもたちに声をかける。


「いつも一緒にいた少年(ヤツ)は?」


声をかけられた子どもたちが


シュレンの顔を見て声をあげる。


「あー!『窓割りのシュレン』!」


「今日もすごかったねー!」


質問とは関係ないことで騒ぐ子どもたちに、


シュレンの頭にじわじわと怒りが浸透していく。


そして、シュレンが引き絞る口の端から、


白い煙が溢れ出て、激しく立ちのぼる。


「――バカにしてるのか!!」


楽しそうに笑う子どもたちに


シュレンは大人げなく突っかかる。


彼女が口を開けるたびに


喉の奥にある小さく熱い炎が見え隠れする。


遅れて公園へ到着したライトが


シュレンに「落ち着け」と声をかける。


「……これだから好きじゃないんだよ」


子どもたちから目をそらしながら


シュレンはそう反応した。


ライトはシュレンから目を離し、


改めて子どもたちに尋ねる。


「その少年はどこへ行ったか知っているか?」


ライトの問いかけに、


子どもたちはすんなりと応える。


「うん!知ってるよ!」


「ワンちゃんを追いかけて、あっちに行った!」


そう言って、女の子が二人の後方の道を指差した。


「……来た道だな」


「『ワンちゃん』?」


ライトが来た道を引き返そうとする一方、


シュレンは女の子へそう問いかけた。


「うん!クロムはどうぶつが好きなんだよ!」


「ふーん……」


シュレン自身が聞いたのだが、


彼女は興味が無いようにそう反応した。


「シュレン、先行くぞ」


ライトはシュレンにそう告げ、公園を去った。


その後を追うようにシュレンも走り出した。

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