NO.10 『外』へと

ライトの首筋に一筋の汗が流れた。


「……アイツが、シュレンなんだな?」


「え?ああ……『外』へ行った子のことかい?


そうだよ、あの子がシュレ――」


ライトは若い男性の言葉を最後まで聞くことなく、


走って大窓へと向かった。


「なるほど、アイツはもう手に負えない。


だから、ムカイさんの監視下に入るわけだ」


独り言を呟きながら、


風が際限なく流れ込む『大窓』の前に立つ。


髪も服も、吹き込む風に煽られる。


「ちょ、ちょっと!


危ないよ、君!離れて!」


若い男性はライトが目の前から不意に消えたことに


しばし硬直していた。


その硬直から抜け出すと、


『大窓』の前に立つライトへ向けて


そう注意喚起をした。


「――!?」


ライトは『大窓』の異変に気づき、


上部にある『大窓』のフレーム部分に顔を向ける。


――大きな穴が空く『大窓』の四隅から、


じわじわとガラスがまるで液体のように滲み出ている。


飛び散ってたガラス片も液体のようになり、


床と一体化していった。


「クソッ!」


ライトは毒づき、


顔を『大窓』の正面に戻す。


穴の空いている部分が徐々に狭まっていく。


それでも構わず、


ライトは数歩後ろへ下がって、


助走をつける。


足を素早く動かして、


『大窓』の穴へと飛び込んだ。


そこは『外』の世界。


ライトは地上へ向かって落下していく。


彼は好き放題暴れている少女に目を向け、


少女の頭上へと狙いを定めて落ちていく。


――「最悪な出会いだな」と呆れながら。

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