NO.9 厄災再び

ライトが現場に到着すると、


すでに人だかりが出来ていた。


その群衆の奥には、


大きく割れた『大窓』と


その付近に散らばるガラス片があった。


「どういうことだ……


『大窓』が割れている……?」


あり得ないことを目の前にしても


正気を保てているライトの呟きに、


若い男性が反応する。


「君、見ない顔だね。


違う『階層』の子だろう?


ここと違って身なりも良さそうだし」


その男性に声をかけられたライトは


「……ああ」と応える。


「ここら辺ではよくあることなんだ」


ライトは男性に体を向けて、


訝しげに眉を寄せる。


「よくあること、だと?」


「そうだよ。


ここ最近のことだけど、


最近はしょっちゅうだね」


「ふん……」


ライトは口から小さくそう漏らしながら、


開放的な窓の外を眺めて目を細める。


その二人のやりとりの奥で、


息を切らしながら走って来た


中年男性がいた。


彼は『外』へ行った少女に向けて叫ぶ。


「~~!またやったな……シュレーン!!」


ライトはその中年男性の叫びに


目を見開く。


「シュレン……だと?」


ライトは後ろを振り返る。


そこにはまだ息を切らしている中年男性と、


そんな中年男性の様子を目にし、


いつものことだと微笑ましそうにクスッと笑う群衆がいた。


「彼はシュレンの住処の大家さんみたいなものだからね」


ライトと話していた若い男性も


そう言いながら楽しそうに笑っていた。

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