NO.7 一人目
机の上に両足をかけ、
椅子の背にもたれかかり、
天井を眺めている。
その男は、
暇そうにゆらゆらと椅子を揺らしていた。
男は20代後半くらいの見た目をしており、
実年齢もそのくらいだろう。
『街』に住んでいる人々の服装と比べ、
どことなく位の高そうな装飾がしてある。
彼の机上の端にはプレートが置いてあり、
そのプレートには
『灰式-ムカイ』と刻まれていた。
――ギィ。
重い扉の開く音がする。
その扉は再び音を立てて
ゆっくりと閉じていく。
その男――ムカイは
音がした扉の方へと顔を向ける。
大きな扉の前には10代半ばの青年がいた。
「ああ、来てくれたんだね」
ムカイはそう言うと、
足を下ろし、体を起こして
青年の顔を見た。
青年はムカイの言葉に何も反応せず、
ただムカイの方へ向かって歩いてくる。
ムカイは近づいてくる青年へと話しかける。
「ライト君。
君に頼みたい事がある」
その青年――ライトは呆れた様子で
ため息をつく。
「……またですか。
貴方は何でも俺に頼みますね」
「だって、君は有能だからね」
ムカイが机の前にたどり着き、
机から少し距離を取って立ち止まった。
「……次は何ですか」
ムカイは机に肘をつけて手を組み、
ライトを見上げてこう言った。
「君にはチームを組んで
『外』で魔物と戦ってきてほしいと思う」
「……は?」
その言葉にライトは目を見開く。
彼にとって予想外の言葉だったのだろう。
「今度は長期の依頼になってしまうね。
でも大丈夫。チームだから」
「いや、ちょっと待ってください」
自身の話すことだけを
つらつらと話し始めたムカイに、
ライトは待ったをかける。
「俺には頼まないって言っていたじゃないですか」
「誰が?」
「貴方が」
「……そんなこと言ったかな?」
ライトはとぼけるムカイを見て
嘘をつかれたと怒るのではなく、
再び呆れた。
この人はこういう人なのだと。
嘘をついたのではなく、
覚えていないだけなのだと。
「それで、チームのメンバーは?」
そう言ったライトはムカイへ顔を向けた。
ムカイはパッと笑顔になって応える。
「ああ、それなんだけどね、
探しに行ってくれる?」
「……」
ライトは誰が見ても明らかに
嫌そうだとわかる顔で
ムカイを見ていたが、
ムカイの表情は一向に変わらない。
「名前、特徴、どこに現れるかとかは
この紙に書いておいたから、
探してココに連れてきてね」
ライトはムカイが差し出してきた紙を
渋々受け取り、身を翻した。
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