NO.3 来る未来
青年の語りに
子どもたちが湧き上がる。
「おおー!」
「『えいゆう』さん!」
「うぃりえるのおしろ!」
それぞれに盛り上がる子どもたちを、
青年がおろおろとしながらも静めようとする。
青年は、子どもたちの後ろから
小さな人影が近づいてくるのを
目の端で捉える。
彼はその人影の方へと
目を向ける。
青年が手を伸ばして話しかけると同時に、
その人影は木の物陰の後ろに
素早く隠れてしまった。
「君も聞いていかないかい?」
出来うる限りの優しい声で
彼はそう問いかけた。
その問いかけから少しの間を置き、
物陰からゆっくりと姿を現わす。
その人影は、
青年に集まる子どもたちと
同じくらいの年頃の少女だった。
その少女は大事そうに
クマのぬいぐるみを抱きかかえていた。
「おいで」
青年がもう一度話しかけ、
手の平を上にして手を差し出し、
少女の方から握ってくれるのを待つ。
少女は顔を下に向け、
青年へ一歩一歩近づいていく。
子どもたちは
少女の顔色をうかがうかのように
じっと少女へと目を向けていた。
少女が青年の近くへ行けるように
子どもたちは道を空けてあげていた。
やがて少女は青年の前にたどり着いた。
少女は片手でめいぐるみを抱きしめ、
空いたほうの手で青年の手に
自身の手を重ねる。
そして、少女は顔を上げ、
青年の顔を見て言う。
「うん、聞く」
そう言って、少女は笑顔になる。
安心したように
子どもたちがお互いの顔を見合って笑う。
最後に青年が口を弧にして、
少女の手を握った。
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