2 白雪姫、新たな世界で幸せを探す

 そして白雪姫は、『シンデレラ』の世界へと入り、そこで事前じぜんに教えられたシンデレラの家を訪問しました。


白雪姫「あの、私、シンデレラさんの紹介しょうかいで来ました。私は、ある国の姫なんですけど、事情があって。しばらく、ここにめていただけないでしょうか?」

継母と娘「ひ、姫様!? はい、どうぞどうぞ! こんな狭い家で良ければ!」、「あの! 貴族や王子様の、お知り合いって居ますか!? 良ければ私達に、結婚相手を紹介してください!」


 シンデレラの一家は、一般家庭にありがちな、とても権力に弱い人達でありました。シンデレラが居なくなった事などにもめず、彼女達は白雪姫を歓迎するのでした。




 それぞれの物語世界で、夜になります。ヒロインらは携帯機で話し合いを始めました。


シンデレラ「これで、かぐや姫の件は解決だな。ほとぼりがめたら、元の世界に戻れるんじゃねぇのか」

かぐや姫「どうでしょうね。また月からの使者が来て、争いになって死傷者ししょうしゃが出ないとも限りませんし。わたくしを育ててくれた父母には、携帯の予備機を渡しましたから、違う世界からも映像付きでの会話は出来できますけど」


 シンデレラは現在、かぐや姫を育てた夫婦の家に泊まっています。金髪の彼女は明らかに家の中で浮いていて、居心地いごこちが悪そうです。ちなみにかぐや姫は、白雪姫が居た森の中の小屋に居て、そこで七人の小人こびとかこまれてました。


白雪姫「かぐや様は、ご両親と仲が良いんですね。うらやましいです……」

シンデレラ「分かるぜ。継母ままははってのは、きつく当たってくるよな。アタシなんか、その継母の娘からもいやがらせをされてよ」

白雪姫「シンデレラさんが居なくなっても、おうちかた、全く心配してなかったです。シンデレラさん、苦労してきたんですね……」

シンデレラ「さんけはしてくれよ、シンデレラでいい。まだアタシはマシな方さ、あんたは継母から殺されそうなんだろ? そっちの方も解決しないとな」

かぐや姫「それですけど、元の物語世界では、最終的に白雪姫は王子様と結婚するのでしょう? そういう解決方法では、いけないのですか?」

白雪姫「それは……いやです。毒リンゴを食べて仮死かし状態になって、王子様の助けを待つのでしょう? あまりにも受動的じゅどうてきじゃないですか。私は自分の意思で、結婚相手を選びたい……」

シンデレラ「いいね。自分の幸せは自分で選ぶものさ。あんたの望みは何だい、白雪姫」


 少し考えて。そして、白雪姫はくちひらきます。


白雪姫「私は……心がやすらぐ家で暮らしたい。そこで休んでから、未来の事は決めたい……」

シンデレラ「決まりだな。なら解決方法もおもかぶってもんだ、そうだろ?」

かぐや姫「どういう事ですか? わたくしには何もかんがきませんが」

シンデレラ「あんたもさっしが悪いな。あんたの育ての親は、娘に去られてさびしいんだろ……」




 シンデレラが言う解決策とは白雪姫を、『かぐや姫』の物語世界へと移動させる事でした。入れ替わる形で、白雪姫は『かぐや姫』の物語世界に行き、シンデレラは『白雪姫』の世界へ行って。そして、かぐや姫は『シンデレラ』の物語世界へと移動しました。


白雪姫「かぐや様の家で、歓迎してもらえて良かったです。親から愛されるって、こんなに幸せな気持ちになれるんですね……」

シンデレラ「ゆっくり休みなよ、白雪姫。いたら、そこのみかどだっけか、最高権力者との結婚を考えてもいいさ」


 白雪姫は現在、かぐや姫を育てた両親の家に迎えられています。黒髪の白雪姫は、金髪のシンデレラよりは物語世界から、受け入れられやすかったようです。一方いっぽう、シンデレラは、白雪姫がらしていた森の中の小屋に居ます。


白雪姫「シンデレラさんも、私と同じで、あたたかい家庭が欲しかったはずなのに……私、もうわけなくて……」

シンデレラ「せよ、湿しめっぽくなるなって。アタシはいんだ、七人の小人こびととの生活も楽しいもんだぜ」

かぐや姫「わたくしは、両親との別れはつらいですけど、それでも新しい世界を見たいですね。元の世界ではみかどとの結婚も考えましたが、今は世界の広さを実感して行きたいです」


 ちなみに現在、かぐや姫が居る場所は、シンデレラの家です。白雪姫とわる形で、かぐや姫を迎えたシンデレラの継母は、「また別の姫様!? しかも月から来た!?」と驚愕きょうがくしています。


シンデレラ「姫様には優しいだろ、アタシの家は。その家で幸せになれないのはアタシだけさ」

かぐや姫「シンデレラ……」

シンデレラ「かぐや姫も、ちょくちょく、育ててくれた親の元に帰る事はできるだろうよ。それなりのハッピーエンドってやつさ。めでたし、めでたしだ」

白雪姫「本当に、ありがとうございました。シンデレラさんも、かぐや姫も、どうか元気で。これからも友達で居てくださいね……」


 涙声で、白雪姫が通信を切りました。満足まんぞくそうなシンデレラですが、そんな彼女の顔をかぐや姫は、携帯の画面しに見つめておりました。

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