第44話 男の娘リントン王子


王子?一行を応接室に案内した俺たちは再度挨拶を交わしたのだが、やはりこの幼女は王子だと名乗った。


「王子?様がなぜわざわざこんな辺境の領地にお越しになったのでしょうか?」


多分ヘントン王子やミリアとオリビアと二人の王女が関わりのある領地だから挨拶に来たのだろうと思いつつも一応質問をした。


「リゲル様は第一王子のヘントン兄様、それから第四王女ミリア姉様が贔屓にしている領主様ですから直接挨拶を、と思いまして」


質問の答えを聞いてやっぱりかと思っていると、リントン王子は後ろにいる二人の侍女を見てからこちらを向くとニコッと笑った。


「それは建前で、実は・・・」


リントン王子は笑顔で話し始めた。

まあ簡単に言うと挨拶という名目でこの領地の新しくおいしいと評判の食べ物を楽しみに来たのと、時を超えし者であるケイコと話すためだった。


「この領の名物に関してはたぶんご提供できます。ですがひとつききたいのですが、ケイコ殿が時を超えし者ということはもう知れ渡っているのでしょうか?」


王子の口からケイコが時を超えし者という言葉が出てきて、おれは知れ渡ってるのか?と気になって聞いた。


「今この国でケイコ様が時を超えし者という事を知っているのはミリア姉様とオリビア姉様、それに私と後ろのふたりの侍女だけです。それにこの二人は私専属で口は堅いですし、洩れることはございません」


王子の言葉を聞いてほっとした半面、時を超えし者であるケイコに用があるのだと分かった。

この場にいるのは王子と侍女の二人の三人、コチラは俺とアリサとベックだけで、すべてケイコが時を超えし者で異世界から来たというのを知っている者だけだった。


「リゲル様、それでしたら、今からケイコ様をここに呼びましょうか?」

「えっと、そうだな、二人を呼んでくれ」


話を聞いてたアリサが俺に声をかけてきたので返事をしてケイコと女神様の二人を呼ぶようにした。


「畏まりました」


アリサは俺の言葉におじぎをして部屋を出ていった。

そしてすぐにケイコとパルミール女神を連れて戻ってきた。


「リゲル様、お二人をお連れ致しました」


アリサはそう言うと扉を開け二人を応接室に招いた。


「パルミール女神様とケイコ殿、呼び出して申し訳ない。実はこちらのリントン王子がケイコ殿に話があるという事で・・・」


俺がそこまで言うとケイコは何か察したように「分かりました」と言うと俺の隣に座りその隣にパルミール女神が座った。


「王子って言ってたけど、この子どう見ても女の子よね?」


座ると同時にパルミールが聞いてきた。

それはずっと俺も思ってたけどさすがに王族に直接聞けないので黙っていたのだ。


「それはですね・・・」

「男の娘」

「王子だから男の子なのは当たり前だけど、目の前にいるのはどう見ても女の子だよね?」


目の前の王子の言葉を遮るようにケイコが一言いうとそれにパルミールが話し始める。


「えっと、私が居た世界ではリントン王子様みたいな女の子の姿をした男の子が少ないですが居たのですよ」

「ケイコ様、それは本当ですか?その事をもっと聞きたくて来たんです」


ケイコの言葉を聞いてリントン王子は前のめりになって生い立ちやどうしてこのような格好をしているのか等を話し始めた。


生まれてすぐに王様の側室の一人であった実の母を亡くし乳母である侍女に育てられ侍女たち女性だけの中で育った事。

その影響からかかわいい物やかわいい服が好きな事。

王子という立場でありながらこのような格好をしている事で王宮での居場所がない事。

など話してくれた。


リントン王子が一通り話終わるのとほぼ同時くらいにノックの音がして応接室の扉が開くとアリサが「食事の用意が出来ました」と伝えてきた。


キリの良い所という事で、俺たちは応接室を出て食堂に向かった。











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