第43話 王子様?がやってきた


春になると畑の種まきの他に西の区画の開発も始まり春ならではの忙しさに追われるようになっていた。


現在の町開発進行状況は

町の玄関口となる東区画は主要な建物が建ちそこで働く者の住宅も建った。

南区画も迎賓館を残すのみ、とはいっても後は内装だけなのですぐに終わるらしい。

北区画はまだ手を付けていない状態、とはいえ大きな炉や各種窯の建設が始まるようで大量のレンガを作っている。

完全な完成は数年後になるが基本的な施設に関しては今年中には完成するという。


春の最初の会議は今後の予定の報告会とそれに伴う予算の分配の取り決めで終わった。


「収穫も税収も安定してきたし、報告を聞くかぎり順調で何よりだ」

「順調だからこそ気を抜かないようにしてくださいね」

「ああ、そうだな」


みんなが退出した後、アリサがお茶を持って来て報告をまとめた書類を見てのひとり言に反応する。

アリサの言う通りここで気を抜いたらだめだなと再度気を引き締め入れてもらったお茶を飲む。



春になり今年初の行商人が訪れ、街道の安全が確認されるとオリビア王女は自領の管理をするために帰ることになった。

その際に冬の間にケイコに頼んで作ってもらったらしい各種調味料を大量に馬車に積みほくほく顔で帰って行った。


王女様が帰ってから数日後にそれより大きな事実が舞い込んできた。

ヘントン王子からの手紙が早馬で届けられたのである。

内容は貴族独特な言い回しのあいさつで始まり、オリビア王女やその他の事でのお礼の言葉、そして最後に書かれていたのは隣領のイージ子爵領の事だった。


隣領のイージ子爵領、今は元イージ子爵領とでもいうべきだろうか、まあそんな事はどうでもいいが、その領地だが、いまは王宮から派遣された代官がイージ元子爵の後始末に追われていた。

それも目途が立ったということで名目上は昨年10歳になりお披露目が済んだ末っ子である第四王子のリントン・ローライの領地となり、実質は今の代官がそのまま継続して統治していき王宮直轄地となるらしい。


「これは挨拶に行かないと駄目なやつだよな」

「そうですね、こちらから挨拶に行くのが普通かと。・・・これまでの王子様や王女様を見ていると、その常識は通用しなかったりするかもしれませんね」


アリサの最後の一言が気になったが、すぐに出かける支度を始める。

隣領の領都までなのでそこまで大変ではなく数日で整い、あとは出発するだけという状態になった。

そして出発の日の朝、荷馬車に荷物を積んでるとき、その一報が入った。


「領主様、お客様が町の入り口に来られまして、騎士団がこちらに案内してきます」


大慌てで現れたケビンの言葉と顔を見て、おれは「やっぱりこうなるんだな」と思いながら周りにいた者たちに『出発は無し、玄関前の馬車の移動』を指示してアリサにベックを呼んできてもらい使用人も集めて、これから来る客人を出迎えるために整列をする。


「アリサの言うとおりになったみたいだな」


俺の言葉に苦笑しながらも使用人に細かな指示とこの後の行動の確認をしていた。


迎える準備が終わるとほぼ同時に門を通る先導の騎士団員とその後ろの王族の紋章の入った豪奢な馬車とそれを護衛するようにいる王国近衛兵が見えて、俺の想像が確信へと変わった。


「やっぱり王家の方々は常識が通用しないのだな」

「そうね、王女様たち見て少しは慣れたとは思ってたけど、まだまだみたいね」


俺の言葉に後ろに居たケイコが答えて二人で苦笑した。


そして馬車は俺たちの前に止まり降りてきたのは、15歳位の王宮の侍女が着ているのと同じデザインのメイド服を着た少女が二人、その後にスカートを穿いたかわいらしい幼女が降りてきた。


「あれ?隣領の領主になる王子様だと思ったんだけど・・・」


思ってた人物と違うことに驚いていると、それに気づいた幼女がにっこり笑いこちらを向いてきれいな所作で挨拶をして来た。


「領主様自らのお出迎えありがとうございます。わたしはローライ王国王位継承権第九位で第四王子のリントン・ローライです」


目の前の幼女の挨拶に俺を含むその場に居た者は理解不能になり固まっていた。


『あれ?王子?でも目の前にいるのは幼女?・・・』


思考が追い付かない俺の後ろではケイコが目をキラキラさせプルプルと震えながら何やらぶつぶつと言っていたのにすら気づかないほど混乱していた。


「大変失礼いたしました。アブド子爵領領主のリゲル・アブドです。いつまでもこちらでは失礼なのでまずは館の中にでも・・・」


隣にいたベックが肘でつついてきて我に返った俺は挨拶をして、目の前の幼女もとい自称王子様を館に案内していく。

案内しつつもまだ頭の中では理解が追い付かない状態の俺たちを見て王子一行はニコニコと笑顔でついて来ていた。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

忙しくて更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

書く暇がないほど忙しかったです、何とか書こうとPCの前に座って電源入れて立ち上げているわずかな間にぐっすり、気づけば朝に・・・。なんてこともありました(笑)


あらかた片付いて落ち着いてきたので更新再開していこうかと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る