第42話 冬が来た
研究者と技術者が来てからはジョイやルーイ、それに工房のみんなも研究者や技術者から新しい施工方法などを聞き試したり、これまでの方法の利点や問題点など話し合ったりと交流も深まり、それにより作業効率も上がって予定より早く進んでいった。
そして公爵様はと言うとケイコと色々話せて満足したのかニコニコ顔で王都に帰還していった。
ずっと相手にしていたケイコは疲れ果てて死んだ魚の目のようになっていたが・・・、ずっと任せっきりでごめん、と思いながらもそっと目をそらした。
それからほどなくして研究所も完成して研究者が籠り始めた。
町の東に関しても宿や食堂も旧施設から新施設へと営業が完全に移行しはじめ、いくつかの商店も完成した。
南側では迎賓館と新領主館にも手を付け始めた。
北側に関しては工房の親方たちに働く人たちが「まずは町の表の顔からで裏は後回しだ」と整地が終わった状態で放置である。
町の西側もあらかたできてきて、南側も目途がついてきたのでそろそろ手をかけてもと思ったのだが、手伝いをしてくれる町民は今は畑仕事と冬支度があるので手が足りない、という事で町の西側の作業が始まる春以降になるのだろうという事だ。
公爵様の話では本来なら貴族たちは冬の間が社交の場という事で王都に集まってお茶会やパーティーなどをするらしい、親の代から招待状など貰った事も無いので冬の間は領地で領民と過ごすのがいつもの事である、辺境の貧乏貴族を招待するもの好きなんていないので当たり前である。
だが今年は違った、多少なりとも王族とつながりがあり、なおかつ子爵に上がった事も関係してか数通の招待状が届いていた。
ウーデル公爵の派閥の下級貴族とオリビア王女ヘントン王子を支持する派閥の下級貴族がほとんどであった。
「これは行かないといけないのか?」
「派閥の勧誘も兼ねた招待だと思います、行けば当家がその派閥を支持するものとみなされるでしょう」
「今はそんなことしてる暇ないんだよな」
招待状の手紙を横目に書類に目を通しながらベックと話していた。
結局は今は町の拡張で忙しいという理由で丁重にお断りの手紙を書くのだけれど・・・。
そんなこんなで冬支度も無事に終えて、そろそろ季節は冬に差し掛かった。
いつもなら寒くなってくる時期なのだけれども今年はまだ暖かい日が続いていた。
この分だと今年の雪は少ないだろうと町の人も言っていたが、何が起こるか分からないので備えは十分してある。
薪に関しては建設需要で木材がそちらにほとんどが流れていたため今年も近隣の領地から買い集めた、それには収入もあり余裕も有った事やマッツォ商会が力を貸してくれたおかげで、領民すべてが使う予想量の倍を確保することができた。
これで今年も寒い思いをしなくて済みそうだ。
本格的な冬が始まり雪も降り始め、町の拡張作業は中断。
各自毎日の雪かきと屋内でできる作業が中心となっていき雪が解ける春までは町は静かになっていくのがこれまでだった。
だが今年は大きな食堂や酒場ができたという事もあり、町は夕方になるとにぎわっていた。
俺達も時々食堂を訪れてはケイコ考案の料理や町のみんなが考えた料理などを楽しんでいた。
ハンバーグやハンバーガーはもちろんだが、この冬一押しはうどんだった。
これは最初ケイコがこの領で取れる小麦を使って製粉所で粉にしたものを使って作ったのが最初で、野菜をたっぷり入れた塩味のスープをうどんにかけて出したもので手軽に食べられて作る方も手間がかからないという事ですぐに人気になった。
それを町のみんながアレンジしたのが、今食堂で一番人気の鍋うどんだ。
これは昔からこの領で食べていた干し肉や野菜を煮込んだ料理に具を食べ終えてから残った汁にうどんを入れてまた煮込んで食べるというひとつ頼んだら二度おいしい、それに満腹感も得られる料理、として工房で働く男性を中心に人気になった。
そして味も塩味、テリヤキソース味、それからケイコが新しく作った調味料のみそ味、と数種類あり日替わりで楽しめるとあって大人気である。
おれはみそ味に追加で刻んだトウガラシを入れてたべるのがお気に入りである。
他にもうどんを葉野菜と一緒にフライパンで炒めてテリヤキソースで味付けをしたうどん炒めというのも簡単に作れて子供に人気で、食堂で出したところ人気になった。
そのおかげなのかテリヤキソースの売れ行きは町の人や食堂が優先で外部の商人などの買い付けに関しては販売制限をかけてあることもあって来年分まで予約でいっぱいである。
賑わいをみせつつも大きな問題も無く今年も終わり新しい年になっていくのであった。
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14日の投稿ですが、こちらの予約ミスで18日にしていたようです(´・ω・`)
待っていた方いらしたらすいません(o*。_。)oペコッ
これからも『領主になったけど辺境で貧乏で手に負えません』をよろしくお願いします。
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