第32話 留学生の面接
第一陣出発の日、馬車には荷物を積み、空いた馬車には女性を中心に乗り込んでいく。
「さすがに人数多いから全員は乗り込めないか」
「そうですね、ですが交代で歩けばつらくはないかと思います。今回のメンバーは元気ですぐ働けそうなものを中心に選んでますから」
横に居たルーイが俺のつぶやきに答えていた、ジョイは最終確認と人員のチェックで各馬車をまわっていた。
「そうだ、これをついたらケイコかベックに渡してくれ。一応話は伝わっていると思うが念のためにな」
「はい、畏まりました」
そう言って俺はベックにあてた手紙を渡すと、頑張ってな、と肩を叩き孤児院の建物の前で院長と話をするオリビア王女のところに向かった。
「オリビア王女様、そろそろ出発になります」
「はい、わかりましたわ」
俺と王女は孤児院の門に立ち、孤児院の子供たちと次々と出ていく馬車に手を振ったのであった。
馬車を見送ると今度は炊き出しの準備で皆が動き出す。
俺と王女はその場をアリサと騎士の二人に任せると、職人組合の建物に向かった。
職人組合の建物に着くと、俺たちを確認するや否や職員の連携の取れて流れるような対応で応接室に案内された。
「いつ見ても気持ちのいい職員の連携だな」
「そうですね、なかなか優秀な物が指導しているのでしょう」
王女と話をしているとすぐにドアがノックされ組合長が現れた。
「お待たせして申し訳ありません。これが書類選考で受かって昨日街に到着した者のリストです。そしてこちらが明日到着予定の者のリストです」
組合長は挨拶もそこそこに2枚の紙と書類の束を渡してきた。
「ありがとうございます、それでこの人たちは今はどこに?」
「はい、午後から最終面談をすることは伝えてありまして、そろそろ集まるかと思います。」
「そうですか、それで面談はまとめてやるのですか?」
「別室に待機してもらい、数人づつ呼んで面談してもらう予定です。今日は特に来客の予定もございませんからこの部屋をお使いになって構いません」
「色々と配慮ありがとう、では集まり次第順番に開始しましょう」
しばらく出されたお茶を飲み世間話をしていると、ドアがノックされ職員から面談参加者が集まったとの報告を受ける。
「それでは面談を始めましょうか」
そして特に何もなく面談が終わり、リストと詳細の書かれた書類を見ながら三人で微妙そうな顔をしていた。
原因は応募書類にうそをかき込んだ者が多かったことである。
職歴や技能はまあ、問題無いと言えばウソにはなるが、何とかなるレベルだったりするのだが、問題は年齢をごまかしている者が多かったのである。
書類には22歳と書かれていたのにどう見ても50台の初老の人だったなんていう者もいた、他にも20歳と書かれていたが初等学校入学前の者もいた。
大抵の者は面談の際に問い詰めたら白状した。
聞けばみんな待遇が良いので受かりたい一心で書類に心象いいことを書いたと言っていた。
「こまったね、明日来る者たちもこんなだと大変だぞ」
「そうですね」
とりあえず今日面談した者たちには合否は後日連絡するといって泊っている宿に帰ってもらった。
「とはいえ明日来る者もこうだとは限りませんわ、落ち込むのは明後日面談をしてからという事にいたしましょう」
王女の言葉に俺と組合長は頷き話し合いはそこで終了となった。
二回目の面談も約半数の人が申し込みの際に虚偽の報告をしていた。
中にはすぐばれるようなことから、ぱっと見分からなそうなものまでさまざまで、俺たちは頭を抱えてしまった。
「何でこうなるんだ」
「この領地は地方は重税でしたので、高待遇の募集にどうしても受かりたいと思って嘘をついてしまったのは仕方ない事かと」
俺の言葉に組合長が答えるも、俺には納得できない。
とはいっても中には本当の事を書いて来て、意欲もある者も居たので、申込書に嘘を書いた者、面談で嘘をついた者、はこの先、こいつらを信じれる気がしないので即不採用。
そして残ったのはうそ偽りなく申し込みをして、なおかつ面談で誠実、やる気に満ちていたものを採用する。
「残ったのはこれだけか」
俺はため息交じりに言うと、バツが書かれまくったリストをテーブルに放り投げる。
残ったのは13人、内訳は男3人女10人、内未成年6人・・・
女性の方が多かったが、みんな農家の子供で小さいときから手伝っているので体力や筋力には問題がない。
後は合格者は読み書き計算が不安というだけだ、中には簡単な文字を読むことができる程度で申込書も代筆してもらってまで応募してきた人も居た、だが読み書き計算は領地に着いてから教えても何とかなる。
まあそのための留学なのだから、と思いながら合格者13人に通知を出し、それ以外には数日分の給金を出し、希望者は各村に送り届ける事となった。
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