第31話 第一陣出発前日


俺と王女は翌日からは第一陣メンバー選定で忙しく動いていた。

炊き出しはアリサといつもの騎士二人が主軸となり、使用人を連れて毎日行っている。


「そろそろ留学の申し込みが来る頃かな」


俺がふと呟くと、向かいに座っていたオリビア王女が頷きながら、申し込み受付に関しては職人組合に任せてあるので、来たらすぐ連絡が来ると思う、と説明してくれた。


そして第一陣のメンバーは単身の男女、そして着いてすぐにでも働けるような者を選んで決定する。

第二陣は夫婦と年配者、最後の第三陣は孤児の子供や親子と俺たちそれに留学希望者を連れていく。


炊き出しを手伝ってくれている騎士の二人が領地に来てくれるというので王女に聞くと二つ返事で連れて行っていいと許可も得た。



そして第一陣が出発する前日、俺たちは荷物や馬車を孤児院に運び込まれるのを確認していた。


「いよいよ明日出発だな」

「そうですね、これで領地の人出不足が解消されればいいですね」


アリサと話しているの二人の男がやってきた。

二人はジョイとルーイ、第一陣のリーダーを任せて領地に行きベックの元で文官として勉強させる予定の者だ。


「荷物の確認と明日出発の人員の確認が取れました。こちらがチェック表です、確認お願いします」

「ありがとう、君たちも明日出発なんだからもう休んでいいよ」

「ありがとうございます、それでは失礼させていただきます」


二人が去るのを見て、チェック表を見ると荷物は品名と数量が書いてある、品名の横に丸で数量の横には三角の記号が最後に時間が書かれていた。

同じく覗き込んでいたアリサは頷きながらなるほどと感心していた。

よくわからなかったので詳しく聞くと、アリサは説明してくれた。

物を確認して合っていればまずは丸を付ける、そして数量を確認して今度は三角を入れる、そうすることでどれを見てどれを見て無いかが分かるし確認したと他の者にも分かりやすくなる。


「なるほど、でも確認者が適当に見ずに記号を入れていたらどうするんだ?」

「その場合は違う商品だったり数量が違えばすぐばれますよね、そのような場合は確認した者に責任が来るわけです」


アリサに説明されるがいまいち分からない部分も多かったが、まああの二人は真面目そうだから問題ないって事か、と思いながら話を変えていく。


「ところで第一陣のメンバーはどこに居るんだ?朝早い出発だから今日集合しているはずだが」

「それでしたら今日は孤児院のホールにて泊っていただいています」


アリサの返事を聞き、俺はホールに向かった。

そこには30人程の人が座って休んでいた、すると俺が来たのに気づいた者達がつぎつぎと挨拶やお礼を言いに来た。


「明日出発だからゆっくり休んでくれ、道中はそこにいるジョイとルーイがリーダーとして指示してくれる、何かあったら相談すればいい」


そう伝えると二人は元から貧民街の一角でリーダーの様な事をしていたらしくある程度の信頼があったようで、あの二人なら安心だ、とか、二人に任せれば問題ない、と口々に言っていた。

『思ったより信頼されているんだなあの二人』と思いながら、一人づつ領地の発展のためによろしくと握手していった。


その後、院長に庭やホールを開放してくれたことなどのお礼を言って挨拶を済ませると孤児院を後にした。


帰路につき貧民街を出たところで若い男性に声をかけられ俺たちは足を止めた。


「あの、アブド男爵様でしょうか」


俺とアリサが警戒をしながら頷くと、警戒した俺たちに男は手をあげて怪しくないというそぶりを見せた。


「警戒しないでください、私は組合長から『書類選考で選んだ者の一部が着いた』と直接伝えるようにと伝言を頼まれて来ただけです」

「そうか、ありがとう。では組合長には明日の午後に伺うと伝えてもらえるかな」

「わかりました、それでは」


男はそういうと深々と頭を下げて振り向くと走って行っていった、見えなくなるのを確認して俺たちは警戒を解いて館へと帰る道を歩き出す。


館に戻ると王女に第一陣は順調に明日出発ができる事と先ほど言われた書類選考合格者の一部が到着したことを話す。


「そうですか、では明日は私の予定はありませんので一緒に出発を見送って面接もお手伝いしますわ」


オリビア王女はそう言うとなぜか楽しそうに微笑んでいた。








―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

更新再開いたしました。

更新遅れてすみませんでした。


出来れば☆と♡いっぱい欲しいです。

できれば・・・、できればでいいんです・・・、私の小説を読んでくれる心優しい人たちならぽちぽちっとしてくれると信じています。


という事で今後も水土の週2回更新していきますので読んでいただけると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る