第24話 王子様一行と村へ


翌朝、俺とアリサは王子の馬車に、ケイコと女神様は王女の馬車に、同乗させてもらい向かうことになった。



「今回の領地の件は王都に戻って報告するのだが、最近のアブド男爵の貢献なども含めて国から褒賞があるかもしれんな」


王子の一言にアリサは全身で喜びを表していた。


「リゲル様、国からの褒賞なんて代々語り継がれるくらいの栄誉ですよ」

「ありがとうございます。それは領民一同とてもうれしく思います」


俺は無難にこたえつつも話題がなく緊張しまくりだった。


「アブド男爵、そんな緊張しなくてもいいんだよ、ここには今三人しかいないんだ、もっと気楽にしていい」

「とは言いましても。わたくしは下級貴族でヘントン王子は第一王子でしかも王位継承第一位ですから、身分差が・・・」


そんな俺の言葉に王子はさみしそうな顔をしていた。


「王位継承権に身分差か。・・・そんな物のせいで俺には」


最後の言葉は聞き取れなかったが、何か失礼な事を言ったのかと思い謝るも王子はすぐにいつもの笑顔に戻り「気にしないでくれ」というと窓の外を見て、


「そろそろ昼の休憩予定地点に着くころかもしれないな」


そういった直後、馬車の窓の外に騎乗した近衛兵の一人が現れて、間もなく休憩のため停車しますと伝えて敬礼をして去っていった。


「それでは俺たちも降りる準備するか、といっても特にすることはないんだけどな」



休憩地点に着くと、俺たちは馬車からおりて背伸びをして周りを見渡す。

近衛兵が先行していたのだろう、辺りにはテントと簡易テーブルが設置してあり食事の用意をしている最中だった。

かまどにはスープでも作っているのか大きな鍋をかけていた。


「王子様、王女様、もう間もなく用意ができます、お席にどうぞ。アブド男爵様たちもどうぞお席にお付き下さい」


侍女の一人が俺たちの元に来て、王子と王女の三人を案内しながら俺たちにも声をかけていった。


「では俺たちもお言葉に甘えてお世話になろうか」

「「「はい」」」


そばにいたアリサたちに声をかけて王子たちの後をついて行く。



席に着くと次々と料理が出されていく。

朝に町で買ってきたパンに野菜と炙った燻製肉が挟んであるサンドウィッチに塩とハーブで味付けしたスープ、それにジャガイモを湯がいた物が出てきた。


まずはサンドウィッチを食べるが、燻製肉のしょっぱさだけが口に残っていた、それを消そうとスープを口にするが塩が多めなのかしょっぱい。

いつも食べているケイコやアリサの物に比べると美味しくない、と思いながらも王族の出す物なので美味しくないなどと口に出来ずに笑顔を作りつつ味あわずに飲み込むように食べていく、そんなとき。


「これしょっぱいだけでおいしくないですね、これならケイコちゃんやアリサちゃんの料理の方がおいしいです」


女神様の一言にテーブルに着いてる者は固まり、周辺を警戒していた近衛兵たちまでもがこわばった顔でこっちを見ていた。


「あの、すみませんでした、私の客人が失礼なことを・・・」

「そういえばこのさんどうぃっちは男爵の領地の発祥だったな。本場の物に比べると味が落ちてしまう物だから仕方ない。それに作ったのは近衛兵たちで見よう見まねだからな」


慌てて俺が謝罪をするも気を取り直した王子が答えてくる。


「あの女神様、女神様は今はお忍びで私の客人という事になってるんですよ。あんなこと言ったら私が処断されてしまうじゃないですか」

「だって、本当の事じゃない」


女神様に耳打ちするが反省する気が無いようだった。


「ははは、それなら村に着いたらアブド男爵たちがいつも食べている料理をごちそうになるとするか」


そう言って王子はこの場を収めてくれ事なきを得たが、冷や汗だらだらで何を食べたのか何を話したのか等全く記憶に無いまま休憩を終えて出発した。


そして無事に村に着くと、ノア村長に挨拶をしてヘントン王子に紹介をするのであった。


その後色々と話を聞いているとノア村長はこの地が王族直轄地になる前の領主の側近をしていたという。

引継ぎなどでターブ準男爵の元で働いていたが疎まれたのか厄介払いのようにこの村の村長にされたらしい。


そんな話を聞いたのち王子が代官としてこの領地を任せると説明すると、最初は渋っていたが、この村やこの領地の民を守るためと説得されてノア村長は頷いた。

そしてなぜか俺は何かあった時の相談役にされてしまった、自分の領地ですらいっぱいいっぱいなのに他領まで見きれません、と説明するもノア村長が貴族位を受けるまでなのでよろしくと王子見ずから頭を下げられてしまい断り切れなくて了承することになってしまったのである。


そして話が終わるとタイミングを計っていたのかアリサが料理ができたと伝えに来た。

それを聞いてそれぞれ食堂に向かうのであった。













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