第20話
スタジアムの中では片づけをする人々。燈彼はお祭りにあった子の事を思い出していた。
あの子が見える――妙に懐かしくて、何度も何度も半数してしまう。もう一度会いたい、あの子といる間だけ傷ついたことを忘れていた。
「おーい燈彼」
スタジアムの中にいた燈彼ははっとして振りかえる。
妙に満たされていた。ライブは大盛況、こんなに満たされた気分のライブは初めてだった。
歌っている時も喋っている時も思考の中にはあの子がいて、手を引くとなんとも幸せな気持ちだった。どうしてだろう。あの子の事を考えるとあの人の事を忘れてしまう。
「なぁ燈彼ってば」
「聞いている。今日はお疲れ様」
「あぁお疲れ‼ 大盛況だったな‼」
「うん……」
刀魔は少し目を伏せ息を吸った。決心したはずなのに、妙に言い辛くて頭を掻く。
「どうかしたの?」
「いや、その、さ、明日って久しぶりにオフもらったじゃん?」
「うん」
「良かったら、水族館いかないか⁉ 朝から、二人でさ。出かけて。美味しい物食べたり、カラオケとか‼」
妙に緊張し声色を震えさせる刀魔の姿に何時か何処かの誰かが重なって。
私にもこんな風に声を震えさせて勇気を振り絞った時があったと思いを巡らせる。
「いいかもね」
「ほんとに⁉」
「三人でいいの? 他にも誘う? どこ集合にする?」
刀魔はぐっと奥歯を噛んだ――ここから抜け出すんだ。一歩踏み出すんだと。
「いや、ふっ二人で‼ 二人で出かけたいんだ‼ この意味、わかるだろ‼」
そう言われて、燈彼は目を丸くした。
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