仲直りのグラタン
ザカリアスは魔王様が帰ってくるまでお城に滞在していた。
「なんでおまえがここにいる!?」
「アル〜!おかえり!」
軽く挨拶されて、魔王様はウンザリとした表情をした。あからさま過ぎて、ちょっぴりザカリアスが悲しい顔をした。
「勝手に部屋の鍵を開けたな!?マナに何もしなかっただろうな!?」
「大丈夫よ。ルドルフもいたしね」
あたしは大人しくしてたよね!とルドルフに向かって言う。
「僕に感謝の意がほしいね」
使い魔なら当たり前だろうと魔王様に流されて、ルドルフは不満げに頬を膨らませている。
魔王様は部屋着に変えてソファに座る。あたしはお茶を淹れる。ザカリアスが、その様子を見て、ぴくっと片眉を動かす。
「君、『黒薔薇姫』を傍に置き、そんな使用人たちのような真似をさせているのかい?」
ブッ!とお茶を吹き出す魔王様。ザカリアスが汚っ!と避ける。なにしてんですか!とあたしはタオルを持ってくる。
「……なんのことだ?」
「とぼけても無駄だよ。そのネックレス、どうやって手に入れたんだ?我が妹のものだぞ!単なる少女がつけれるものではないし、マナはまさかとは思うけど……」
魔王様は涼しい顔して興奮気味のザカリアスに言い返す。
「たまたま拾ったネックレスを気に入りの者にやってなにが悪い?」
「拾った?本気でそう言っていないよね?」
ザワリとザカリアスの魔力が騒ぐ。だったらなんだ?と魔王様の漆黒の目が相手を挑発するように見た。
緊迫する部屋の空気……ルドルフが怯えるように目を見開く。二人の力が強いことがわかる。カタカタと机の上の物が動き出す。
このままでは、大変なことになる。危険だと
本能でわかる。……でもどうしたらいいのよ。
はっ!そういえば……あたしは叫んだ。
「二人ともやめてー!そろそろできたわよ!」
『何が?』という疑問符を浮かべてこちらを見る二人。タイマーがピピピッと鳴る。あたしは一度調理場へ帰って、鍋つかみでオーブンの中の物を取り出し、慌てて魔王様の部屋まで戻る。
「ちょうど良かったわ。アツアツのグラタンです。どうぞ召し上がれ!冷めたら美味しくないから、今すぐよ!すぐ食べましょう」
キョトンとしてから、ザカリアスがアハハッと笑って緊張を解く。魔王様はちゃっかり皿を持っている。
「とりあえず食べてからにするか」
「そうしようか!」
意見が一致したようだ。
あたしは焦げたチーズのところを上にし、とろりとしたホワイトソースとジャガイモ、ベーコン、ゆで卵の入ったグラタンをよそっていく。チーズのいい匂いがする。
「熱っ!でもうまい!チーズとソースが具に絡んでいい感じだな」
魔王様の表情が緩む。
「ジャガイモとゆで卵のグラタン初めて食べたけど美味しいね!ホコホコしてるなぁ」
ザカリアスも美味しそうに頬張る。あたしはそれを見て微笑む。
「あたしは料理を作って、みんなの幸せそうな顔を見るのが好きなんです!美味しいって言われるのも嬉しいです。魔王様に無理矢理させられているわけではありません」
ザカリアスがあたしを見て困ったように笑う。そして食べながら魔王様に言う。
「マナの作ったものを食べると、なんだか元気を貰える気がするんだけどな?」
「おまえに隠しても、もう食べてしまい、バレてるだろうから言うが、なんらかの効果が付与されている」
やっぱり!と言う。グラタンはさしずめ、体力アップのようだよ!と鑑定している。
「マナがこんな力を持っているなんて。まさかとは思うけど、時々、アルが人の世界へ行っていたのは……」
魔王様は手を上げてそこまでにしろとザカリアスを制した。
「だからおまえには見せくなかったんだ」
「そりゃ気になるのは仕方ないだろう!もし『黒薔薇姫』なら僕の妹なんだぞ!ゴーシュ家の姫君を返してもらいたい」
「マナがそうであるという証拠はない」
ザカリアスが馬鹿言うなよと魔王様に言う。
「君が見間違うはずがないだろう。じゃあ、こうしないかい?ゴーシュ家に来てくれ」
……こんな経緯で
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