夜食のラーメン
最近、魔王様は忙しい。食事もなかなかとれていない。
「魔王様、大丈夫なのかなぁ?」
体調崩さないかしらと心配になる。あたしはのんびり暮らさせて貰ってるのにと申し訳ない気持ちになる。
静かな夜、お茶を飲みつつ読書をするなんて贅沢すぎる。
「体力も精神力も人間とは比べ物にならないよ。大丈夫だよ」
ルドルフは心配は無用だねとアッサリと言う。
そう言われたけど気になってしまう。夜食でも作ろうかなと立ち上がる。
お湯を鍋にたっぷり沸かす。スープはアッサリと醤油味にしよう。
湯気がフワフワとたってくる。麺を入れる。
しばらくして湯切りして醤油ベースのスープが入った丼に麺を投入。そこへほうれん草、チャーシュー、シナチク、コーンをのせて完成。
魔王様の自室である大きなドアをノックする。中から誰だ?と低い声。機嫌が悪そうだ。
「マナです。夜食持ってきました」
「……入れ」
大きな扉の割に押すと簡単に開いた。魔王様はやや疲れた顔をしている。
「こんな夜更けに何をしている?」
「最近、お食事もゆっくりとられてないでしょ?なにか温かいものを食べないかなぁと思って……余計なことかもしれないけど……」
いや、食う。と言って、私からお盆をもらい、机の書類は横へ避ける。
「熱いから気をつけて!」
あたしが言ったのも遅かったらしく、あつっ!と言いつつも食べている。
「ウマイ。腹は減ってたけど、めんどくさかったんだ」
ツルツル〜と美味しそうに食べていく。肉厚チャーシューを頬張り、麺と一緒に口に入れる。丼を持って汁まで飲む。
「はー……ねむくなりそうだが、なんだか疲れが少しとれた気がするな」
「ラーメンは体力回復なのかしら」
あたしはメモ帳を取り出してメモをした。魔王様が半眼になる。
「おい?……オレで試すなよ」
「他の人で試せないでしょー?」
「まぁ、そうだが。なんか実験されているきになったんだが?……うまかった。ありがとう」
珍しい!魔王様が素直にお礼を言うなんて!驚いたあたしに苦笑して言う。
「息抜きしたかったところだった」
「あたしで手伝えることあるなら……なにかできないかな?」
「ハハッ!その気持ちだけで十分だ。忙しない毎日が嫌だったのだろ?のんびりすごせ!それがおまえの望みだろ。好きにしてろ」
笑われる。魔王様は確かにあたしに平穏をくれている。そのお礼をしたいとは思っているのだ。
仕事で手伝えることなんて…なにもないかもしれないけど。
「ありがとうございます」
「礼などいらない。うまいもの食わせてもらってるからな!」
人間とは不思議だなー。なんで自分から忙しさを求めるんだ?と魔王様は首を傾げながら仕事を再開した。先程よりも顔色が良くなった。温かいものを食べると血行も良くなる。あたしはそれを確認して、お盆を下げて、扉を閉めた。
ルドルフが調理場で待っていた。
「僕も食べたくなっちゃったよ!」
「同じく!!」
夜のラーメンとは不思議なもので、連鎖する。
あたしはこの時間のラーメンのカロリーはヤバイよねーと言いながらも二人分のラーメンを作ったのだった。
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