第24話 怪鳥
「きゃああー」
悲鳴が上がる。
「坊ちゃん、静かに!」
ミミが僕の口を抑える。ドゥークもイチハも、怪鳥を刺激しないようにぐっと息を詰めている。
顔を上げた怪鳥は、ちらりと僕らを一瞥しただけで、またそっぽを向いて大きな岩と化す。
「……っはあぁぁ~」
とりあえず出会いがしらに攻撃されなくてよかった。岩陰に移動して張り詰めていた緊張を解く。
「とはいえ、あの鳥を何とかしないと先へ進めないわね」
「ドゥーク様、やっつけちゃってください!」
ミミがドゥークをけしかける。
「そんな無謀なことをせずとも、少しでも隙を作れれば通り抜けて行けるんだが」
「ダメです、ダメです! やっつけなきゃ!」
ミミがぷんぷんと訴える。
「だめよ、わがまま言っちゃあ。わざわざ余計なリスク背負うことはないでしょ」
イチハが
「でも、あの鳥がいたら、騎士様が追い掛けてこられないかもしれないです……」
ミミがしょぼんと耳を垂れる。ミミは恋する騎士様と再会できなくなるかもしれないと危惧しているのだ。
「しかし、この渓谷を越えられないような男なら、そもそもこれ以上先へ進むのが危険だ。だいいち俺は無益な殺生は好まない」
旅人ドゥークはにべもない。
「大丈夫よ、ミミ。ミミの騎士様ならきっと何とかするわよ。それに、別のルートからもう先へ進んでいるかもしれないし」
運命の相手なら、必ずまたどこかで出会うはずよ。説得力のない励ましだけど、イチハはいつになくミミに優しい。女の子同士、通じるところがあるのだろうか。
運命の相手なら必ず再会する……。ミミはそう呟いて、「わかりました」と観念したように息を吐いた。
「それじゃあどうする?」
改めて作戦を練る。岩場の陰から様子を窺うが、怪鳥はどしりと道を塞いで動きそうにない。時々目の前を鼠や虫が通っても、ちらと視線を遣るだけで、興味を示さずじっと動かない。
「何かあの鳥の興味を引くものがあればいいんだけれど」
「やはり食い物だろう」
「でも、小動物にも昆虫にも見向きもしないよ。草食なのかなあ」
「いや、それはないだろう。目の位置が正面にあるのは猛禽のあかしだ。それにほら、見てみろ」
促されて怪鳥の足元に視線を遣ると、うわっ、食べ散らかした白い骨が詰まれている。
「なら、あの鳥はよっぽどグルメなんですねぇ。モンスターが食べたくなるようなおいしそうなものって、一体何でしょうねぇ」
ミミは首を捻るけれど、僕とドゥークとイチハの視線は、目の前の小さな兎に注がれていた。
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