第17話 ミャクミャク

 僕らが袋を覗くと、確かにそこに赤いハートがある。だけど……。

 一度バラバラになってしまったハートの欠片を、そのままかき集めて袋に入れた。はずだった。

 袋の中に手を入れて、そっと中のものを取り出す。

 皆でそれを囲んで、じっと見つめる。夜だけど、焚き火の明かりではっきりと見える。

 バラバラだったはずのハートの欠片が、いつの間にか互いにくっついている。まるで手を繋いだみたいに、ドーナツ状の一つのかたまりになっている。

 それだけなら、こんなに驚かない。袋に入れたまま長い旅をしているのだから、くっつくこともあるかもしれない。けど、それだけじゃなかった。

 赤い輪の中心に、青いかたまりがぷくりと嵌め込まれている。こんなもの、僕は知らない。この袋に入れたのは、大事な赤いハートの欠片だけだ。なのに、なんだこれ?

「……ミャクミャク……」

 沈黙の中、ぼそっとイチハが呟いた。

「え? イチハはこれが何だか知っているの?」

 無意識に呟いていたようで、イチハははっと口を抑える。そんな彼女に代わって発言したのは、旅人ドゥークだった。

「――赤き実の内に、青い星が生まれる。それなむミャクミャクといふ――」

 ドゥークが低い声でそう言った刹那、森を一陣の風が吹き抜け、焚き火が消える。何も見えない、真っ暗闇になった。

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