第17話 ミャクミャク
僕らが袋を覗くと、確かにそこに赤いハートがある。だけど……。
一度バラバラになってしまったハートの欠片を、そのままかき集めて袋に入れた。はずだった。
袋の中に手を入れて、そっと中のものを取り出す。
皆でそれを囲んで、じっと見つめる。夜だけど、焚き火の明かりではっきりと見える。
バラバラだったはずのハートの欠片が、いつの間にか互いにくっついている。まるで手を繋いだみたいに、ドーナツ状の一つのかたまりになっている。
それだけなら、こんなに驚かない。袋に入れたまま長い旅をしているのだから、くっつくこともあるかもしれない。けど、それだけじゃなかった。
赤い輪の中心に、青いかたまりがぷくりと嵌め込まれている。こんなもの、僕は知らない。この袋に入れたのは、大事な赤いハートの欠片だけだ。なのに、なんだこれ?
「……ミャクミャク……」
沈黙の中、ぼそっとイチハが呟いた。
「え? イチハはこれが何だか知っているの?」
無意識に呟いていたようで、イチハははっと口を抑える。そんな彼女に代わって発言したのは、旅人ドゥークだった。
「――赤き実の内に、青い星が生まれる。それなむミャクミャクといふ――」
ドゥークが低い声でそう言った刹那、森を一陣の風が吹き抜け、焚き火が消える。何も見えない、真っ暗闇になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます