ヒナギク


 まだまだ外は寒いです。

 つんとした風が毛のなかまでかいくぐってきては直接からだを冷やしてきます。


 それでもねこちゃんには関係なく、今日も今日とて走っていました。


 出ていく息は白くても、ねこちゃんのほっぺはほんのりとピンク色。

 このさきに待っている彼への思いがほっぺの色にうつっているのでしょう。




 ねこちゃんは足をとめました。




 朝のきらきら光を浴びて、ころんとひらいたヒナギクが、ゆらゆらゆらゆら揺れていました。

 ねこちゃんの淡いココロみたいに、ころんとかわいく揺れています。


 今日のおしゃれはこれにしよう。


 ねこちゃんはそっとヒナギクをつみとって、耳にさしました。

 ちょっとはかわいくなったでしょうか。

 彼はかわいいと思ってくれるでしょうか。


 ねこちゃんは近くの家の窓をのぞきこみました。

 しっぽがゆらりと揺れました。

 



 ねこちゃんはまた走り出しました。




 今日は彼とどこにいこう。

 今日はもっとなかよくなれるかな。


 そんな『希望』を胸に抱いて、今日もねこちゃんは走ります。


 彼と一緒にいるあいだ、どうかこの花が枯れませんように。



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