キンモクセイ


 今日も今日とてハチが飛ぶ。


 蜜をもとめて今日も飛ぶ。


 ブンブンブンとハチが飛ぶ。




 ふんわりふわふわ、甘いにおい。


 秋にあふれる、あのにおい。


 ふんわりふわふわ、甘いにおい。




 ハチはにおいのほうへと、ふらふらり。


 においにつられて、ふらふらり。


 キンモクセイがそこにいた。




 トントントン、とノックする。


 トントントン、とハチがする。


 トントントン、とノックした。




 キンモクセイがふわりと揺れた。


 ふんわりふわふわ、甘いにおい。


 キンモクセイが小首をかしげた。




「キンモクセイさん、蜜をくださいな」


 ハチがたずねた。


「どうぞどうぞ、お好きなだけ」


 キンモクセイが答えた。




 小さな花びらにハチが乗る。


 黄色い花びらにハチが乗る。


 香る花びらにハチが乗る。




 蜜を抱える。


 ハチが抱える。


 いっぱい抱えた。




「ありがとう」


 ハチが笑った。


「どういたしまして」


 キンモクセイが笑った。


 『謙虚』なふたり。


 見合って、笑う。




 ふんわりふわふわ、甘いにおい。


 秋にあふれる、あのにおい。


 ふんわりふわふわ、甘いにおい。




 今日も今日とてハチが飛ぶ。


 蜜を抱えて今日も飛ぶ。


 ブンブンブンとハチが飛ぶ。




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