コーヒーの木
とぼとぼとぼとぼ……
小さな足音がひびいています。
くまくんが歩いていました。
とぼとぼとぼとぼ……
しずかに、大きなため息がこぼれました。
くまくんは、足元ばかりを見つめていました。
とぼとぼとぼとぼ……
今日は、とても疲れていました。
家までの道のりが、とおく、とおく、感じて、果てしなくて。
くまくんは、今にも落ちてしまいそうな涙をぐっ、とこらえました。
カチャリ、家のとびらをあけると、ふんわり、あったかいコーヒーの香りがあふれてきました。
「おかえり、ちょうどコーヒーがはいったよ」
くまくんを、ママが迎えてくれました。
「ただいま」
くまくんはとぼとぼ、とテーブルにつきました。
そんなくまくんを見て、ママがにこにこして言いました。
「坊やのには、たっぷりのミルクを入れてあげましょうね」
コポコポ、とマグカップに注いでくれます。
苦そうな黒色に、どんどん白色がまじっていって、やさしい色になりました。
ママがまた笑います。
「パパがとってきてくれたハチミツも入れましょうね。今日はとくべつ、ちょっと多めにね」
きらきらしたハチミツが、とろりとやさしい色のコーヒーに入っていきます。
くるくるくる……
スプーンでまぜながら、ママがくまくんにマグカップを渡しました。
ぽかぽか、手があったまっていきます。
「とてもがんばり屋さんな坊や、今日もおつかれさま。『一緒に休みましょう』」
ママが頭をなでてくれました。
くまくんはあったかくて、やさしくて、あまいコーヒーを飲みました。
「ありがとう」
ぽかぽか、あったかくなりました。
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