花ことば

志夜 美咲

ススキ


 さわさわと、ススキの声がする。


 ぴょんぴょんと跳ねていたウサギは足をとめて、ススキをみた。


 こてんと首をかしげるウサギに、ススキは気づかず、さわさわと話している。


「だれとお話しているの?」


 ウサギはススキに声をかけた。


 さわさわ、さわさわ、ススキがウサギをみた。


「月とお話してるんだよ」


「月と?」


 ウサギは空をみあげた。


 まんまるで、今にも落っこちてきそうなほど大きくかがやく月がゆれていた。


 たのしそうにゆれる月。


 さわさわ、さわさわ、ススキが言う。


 ゆらゆらゆら、月がゆれた。


 とてもたのしそうなのに、ウサギにはさっぱりわからない。


 ウサギはまた首をかしげた。


「どうやってお話するの?」


 さわさわとススキが笑う。


「心が通じればお話できるよ」


「心?」


「そう、心だよ」


 ウサギは月をみあげた。


「とても、きれいだね」


 ウサギは月に向かって跳ねた。


 ゆらゆらゆら、月がゆれた。


 ウサギはうれしそうに笑った。


「伝わったかな?」


 さわさわとススキが笑った。


「うん、うれしそうだよ」


 ゆらゆらゆら、ゆれる月が大きく、大きくかがやいて、空を明るくした。


 夜なのに、明るくて、あったかい。


 ぴょんぴょん、とウサギ。


 ゆらゆら、と月。


 さわさわ、とススキ。


 『活力』をもらったみたいに、ウサギはたかく、たかく、とび跳ねた。




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