第25話 熱意の伝承
冬の資金戦、第2戦の鳥取戦。リベンジに燃える一城は佐原知事を要する鳥取との勝負に挑んだ。だが佐原知事以外のメンバーはやる気のない人たちばかりで挙句の果てにわざと勝たせるためにオールベットをしてしまった。
豪州「俺はこんな試合勝つ気はねえんだよ。」
一城「なに!?」
豪州「こんな試合に何の意味があるんだ?勝っても負けても給料は上がらない。鳥取は一向に変わらない。だったら本気になっても仕方ねえだろ。だから面倒くさいことはさっさと終わらせたいんだよ。どうせ負けても痛くも痒くもないんだから。」
一城「あんた、本気でそう言ってんのか?」
豪州「は?」
一城は鬼気迫る表情で豪州に訴えた。
一城「このチップは県民全員の資産なんだぞ!それを早く終わらせたい一心で全部かけるなんて・・・・・・人のお金をなんだと思ってんだ!」
豪州「知らねえよ。そもそも、こんなふざけたゲームを考えたやつが悪いんだろうが。」
茨城:262,000円 鳥取:338,000円
こうして後半のインターバルを取ることに。
一城「クソっ!あんなやる気のない奴らに負けるなんて。」
恵「すみません。あのまま勝っていれば・・・・・・」
一城「気にすんな。それにこの試合が終わったら俺は鳥取を仲間にしようと考えていたんだし。」
葵「そうだったのですか?とても戦力になるのが佐原知事ぐらいですが。」
一城「そうだな・・・・・・でも、このままずるずるとやっても俺たちの負けになる。何か作戦はないものか?」
葵「・・・・・・でしたら。この方法でいってみませんか?」
一城「方法?」
葵は一城に耳打ちをした。
一城「・・・・・・なるほど。確かにこの方法しかないな。」
インターバルを終え、第6ラウンドが始まった。
最初の葵が1万チップを出した。
佐原知事「・・・・・・フォールドします。」
次の一城はコールを選択。そして次の豪州は・・・・・・
豪州「フォールド。」
誰もが予想していただろう豪州はフォールドを選択した。そこで葵が仕掛ける。
葵「やっぱり降りますか。このまま逃げ勝つつもりですね。」
豪州「別に。俺は面倒ごとは嫌いなんだよ。」
葵「そうですね。まあ逃げ腰のアンタなんて負けても痛くもかゆくもないですしね。」
豪州「お決まりの挑発か。そんなこと言われても怒ったりしないから無駄だぞ。」
葵「ねえ、なんでギャンブル課に入ったの?理由を教えてほしいの。」
豪州「給料がいいからに決まってんだろ。座ってるだけで金がもらえるんだからこれ程楽な仕事はねえよ。」
葵「へぇ・・・・・・昇給もできずに安月給で舞い上がってんだ。」
豪州「・・・・・・どういうことだ。」
葵「私、月300万ほど貰ってますけど。」
豪州「な!?」
葵「だから安月給で調子に乗ってんなって言ってんの。」
豪州「嘘だろ、俺よりいい給料もらってんのかよ。順位は俺たちより下のはずなのに。」
葵「それはそうでしょう。ちゃんと働いていない人に払うお金なんてないわよ。」
豪州の声色が変わった。
豪州「・・・・・・だからなんだよ。さっきも言っただろ。勝っても負けても給料は変わらないって!」
葵「そんな考え方なら一生私には勝てないわね。人生の負け犬さん。」
豪州はテーブルをバンっと叩いた。
豪州「俺は負け犬じゃねえ!勝手なこと言ってんじゃねえぞ。」
葵「(掛かった・・・・・・)悔しかったら勝負してみなさいよ。」
豪州「やってやんよ!俺は負け犬じゃねえってことを思い知らせてやる!」
豪州はフォールドを止め、コールすることに。恵と岸田はフォールドした。一城は1枚チェンジ。葵は2枚チェンジ。豪州は4枚チェンジした。
葵「ベット、3万。」
豪州「コール!」
一城「コール。」
結果は葵は4のワンペア。豪州は3のスリーカード。一城はスペードのフラッシュだったので勝ったのは一城だった。
葵「ありがとう。」
一城「変えたカードがスペードでよかったぜ。」
豪州「はっ!自信満々のくせして結局俺に負けてんじゃねえか。負け犬なのはどっちなんだよ!」
葵「あなた、やっぱりバカね。」
豪州「何だと!」
葵「このデスサイズゲームは3対3のチーム戦なのよ。味方の力を借りるのは当たり前のことでしょう。悔しかったら味方の力を借りて勝ってみなさいよ。」
豪州は歯ぎしりをした。
茨城:285,000円 鳥取:315,000円
第7ターン。佐原知事からのターンで始まる。
豪州「佐原、勝負するのか?」
佐原知事「!?」
豪州が初めて試合の中で佐原知事と会話したことにより驚きを現した。表情を変えない佐原知事が初めて表情を崩した。
佐原知事「・・・・・・ああ。ペアが揃っているし勝負しようと思う。」
豪州「俺はそろってないから降りる。カードは9・2・6・7・A(エース)」
佐原知事「(自分のカードを教えてくれた・・・・・・協力してくれるのか。なら6のカードが一枚あるからこれは交換だな。)ベット、1万チップ一枚。(合計:11,000円)」
一城「俺は降りる。恵と葵はどうする?」
恵「私は勝負します。」
葵「私は降りますね。」
葵は豪州が煽るかなとチラッと見たが豪州は煽る様子はなかった。葵は微かに微笑んだ。
葵「(向こうも本気を出したわね。)」
豪州は宣言通りフォールド。恵はコール。岸田と葵はフォールドを選択した。
佐原知事「3枚チェンジで。」
恵は「私は2枚チェンジで。」
互いにカードをチェンジ。チェンジした後、佐原知事は顔をしかめた。
佐原知事「・・・・・・チェック。」
恵「ならベッ・・・・・・」
一城「恵。ちょっと待って。」
恵「え・・・・・・」
一城「なんか引っかかる・・・・・・佐原知事が簡単に表情を変えるとは思えない。」
恵「でもその前、表情が崩れてましたけど。」
一城「最後に決めるのは恵だけどどうする?」
恵は腕組みをして考えていたが、答えは・・・・・・
恵「フォールドします。」
恵はフォールドした。
都留気「このラウンド、ノーコンテストにより佐原知事の勝利です。」
茨城:272,000円 鳥取:328,000円
恵「ちなみに私はダイヤのフラッシュでした。」
葵「そんないい手札で降りたのですか?」
佐原知事「そっか、さすが一條知事だね。私が嘘の表情をしたのがバレましたからね。」
佐原知事の手札は10のフォーカードだった。
一城「なんとなく見え見えの渋い顔をしていたので引っかけて恵のチップを減らそうとしていたのかなと思ったんです。」
佐原知事「さすが、よく相手を見ているね。」
第8ターン。一城から始まるこのターン。このターンは恵の勝利で佐原知事から11,000円取り返した。
茨城:285,000円 鳥取:315,000円
第9ターン。豪州は1万円をベットした。(合計:11,000円)
恵と岸田はフォールドをした。
葵「コールします。」
葵はコールを選択した。
佐原知事「私もコールします。」
一城はフォールドして葵1人で二人に挑む形になった。豪州は2枚、葵も2枚、佐原知事は1枚交換した。
豪州はチェックを選択した。
葵「ベット1万。」(合計:21,000円)
佐原知事はフォールドをした。
葵「(佐原知事は煽っても無駄だろうしここは豪州くんの動き次第ね。)」
豪州「コール!」
豪州は勝負に乗った。ショーダウンになり葵がカードを開いた。
葵「クイーンのフォーカードです。」
豪州はカードを持つ右手が震えた。
豪州「ストレート・・・・・・俺の負けだ。」
茨城:318,000円 鳥取:282,000円
第9ターンで茨城が逆転をした。
都留気「次が最後のターンです。」
豪州「まだだ!まだ負けていねえ!この試合で勝てばいいんだ!」
佐原知事「豪州くん楽しそうですね。」
豪州「楽しい?」
佐原知事「今までは嫌々やっているようでしたが後半から勝つために全力で戦っている。」
豪州「そうだな。あいつらの口車に乗せられていた感はあるが・・・・・・今はこの勝負を楽しんでんな。」
一城「最終ラウンドは両チーム一人は必ず勝負しなければならないルールだからな。受けて立ちますよ。」
最終ラウンド、恵から始まった。
恵「一條知事、どうしましょう?」
一城「二人とも、俺に任せてくれないか?」
葵「負けたりしたら、愚痴コースですよ。」
一城「葵のは笑えねえな・・・・・・」
恵はフォールドを選択した。
岸田「ベット。3万。」
何とここまで一度も勝負をしなかった岸田が初めてゲームに参加した。
豪州「岸田、お前・・・・・・」
岸田「なんかみんなで楽しんでムカつく。アタシも入れなさいよ。」
佐原知事「じゃあなんで今まで勝負しなかったのかい?」
岸田「いい手札がなくて。でも、これなら勝てます。」
一城「いいでしょう。3人まとめてかかってこい!」
佐原知事1枚。岸田2枚。豪州1枚。一城は3枚交換した。
一城「この手札・・・・・・」
岸田が1,000円を賭け、全員コールを選択しショーダウンをすることに。
岸田「キングのスリーカード。」
佐原知事「5と7のツーペア」
豪州「俺はエースのスリーカードだ。」
一城がスリーカード以上の手札が出れば勝ちだが・・・・・・
一城はテーブルにカードを置いた・・・・・・そのカードは。
一城「2と6のツーペアにジョーカー・・・・・・フルハウスで俺の勝ちです。」
最終結果:茨城:414,000円 鳥取:186,000円
都留気「勝者、茨城。」
一城「(あ、焦った・・・・・・2のスリーカードだったからノーチェンジだと負けてた。)」
豪州「ぐっ・・・・・・負けた。久々に感じたな。悔しいと思う気持ち。」
恵「熱意は伝承するんですね。」
佐原知事は立ち上がり、一城のもとに向かった。そして頭を下げた。
佐原知事「一條知事、ありがとうございました。あなたたちのおかげで周りの人たちのやる気を引き出してくださいまして。」
一城「え・・・・・・でもこの作戦を最初に出したのは葵ですよ。」
葵「私はのほほんと生きてきた人たちがこのフィールドに立っていたことに憤りを感じていたので。」
佐原知事「次は徳島ですよね。」
一城「そうですね。それで、一つ聞きたいのですが。鳥取に勝負吹っかけさせた相手って阿波美知事ですよね。」
佐原知事「そうです。分かりますよね。」
一城「だと思いました。あの人ならやりかねません。」
一城は目線を徳島の方向に向けた。
一城「待ってろよ。必ずあんた達を一生服従させてやる。」
第25話「完」
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